水原家の玄関にて
まだ九時前だというのに太陽は燦々と輝き世界はトップギア。
夏の暑さが世界を揺らし、外へ出るものすべてを焦がす。
外へ出ることも憚られるこの季節、しかし涼香と涼音は外へ出る準備をしていた。
今日は菜々美とここねと四人で水族館へ行くことになっている。
「忘れ物は無いですか?」
「財布があればなんとかなるわ」
「それはそうですけど……」
涼音は涼香のポシェットを確認する。持っていると言っても信用はできない。涼香が忘れ物をするなんてよくあることだ。
「持っているでしょう?」
確かに涼香の言う通り、いつも使っている財布が入っている。
「そですね。安心しました」
これなら大体はなんとかなる。涼音も自分のポシェットの中身を確認してスマホの時間を確認する。
そろそろ菜々美とここねが到着する頃だろう。涼音は靴を履いて外に出る準備をする。
そのタイミングで家の前に車のエンジン音が聞こえたと思えば、スマホにメッセージが入った。
「到着したみたいですね」
「急ぎましょう‼」
靴を履いた涼香が玄関の外へ出る。
涼音も後に続くと、すでに涼香は車の中へ入っていた。とても楽しそうな顔だった。
助手席に座るここねが手を振ってきて、それに会釈を返した涼音は後部座席のドア開けて涼香に言う。
「家の鍵閉めてください」
悲しそうな顔になる涼香であった。




