水原家の台所にて 6
「涼音のお料理教室はこれにて終了ね」
今日の夕食を完成させた涼音だが、さすがに夕食でクリームシチュー一品だけというのは味気ない。
「これだけじゃ足りなくないですか?」
「それはそうね」
首を傾ける涼音に同意する涼香。
夕食だし、涼香の両親も食べるのだ。手を抜きすぎるのは良くない。
「とりあえずサラダとか付けとけばいいですかね?」
サラダだけで足りるか? という意味を込めて涼香に問いかける。
「涼音の愛情がこもっていればお父さんもお母さんも喜んでくれると思うわよ」
つまり足りないということだ。
「……おかず足しましょうか」
水原家に残っている食材でなにか作ることができるか、涼音は今一度冷蔵庫の中身を確認する。
「無いですね。先輩のお母さんが返ってくるまで待ちましょうか」
食材類がほとんど無い。この様子だったら仕事帰りにスーパーに寄るだろう。
「必要な物を連絡しておきましょうか? 涼音が作ってくれるのなら喜ぶと思うわ」
「そうですね。お願いします」
時間帯的に返信が返ってくるのは退勤時だろう。
涼香は、夕食は涼音が作ってくれる旨を母に伝える。
「久しぶりではないの? 涼音が夕食を作ってくれるなんて」
スマホをしまった涼香が微笑む。
「そですね」
ひと段落終えた涼音が返す。
圧力鍋で調理したのだが、特に急いでいなかったため機能は使わなかった。
とろ火でじっくりと煮ていればなんとかなるだろうし。
「しばらく休みますか。できることも無いだろうし」
大したことはしていないが初めて作ったのだ、少し疲れてきた。
「マッサージをしてあげる。愛情を込めてね」
涼香が手をわきわきさせる。
「こねる気ですよね? あたしはパンですか?」
「いいではないの。食べてあげるわ」
そんなやり取りをして、二人は少し休憩に入るのだった。




