水原家にて 5
湯気立つシチューを目の前に座る涼香と涼音。
「食べましょうか」
まるでなにかから目を逸らすように、涼香は手を合わせてシチューを食べ始める。
「先に、食べましょうか」
先に、を強調した涼音も手を合わせてシチューをスプーンで掬い口へ運ぶ。
「ルウは素晴らしいわね」
「そですね。美味しいです」
「涼音への愛情がシチューの味を引き上げているわ」
そうして瞬く間にシチューを食べ切る二人。
真夏に食べるあっつあつのシチューもなかなかいいものだ。
「ねえ涼音。一つ、大切な話があるのよ」
口を拭いた涼香が、座り直して涼音に告げようとする。そのただならぬ雰囲気に、涼音は湿度の高い目を向ける。
「切った材料はどうすればいいのかしら」
「またシチュー作るしかないですよ」
「そうなるわよね……」
昨日切った野菜は使わなければならない。
「夕食もシチューかしら?」
「別にシチューじゃなくてもいいと思いますけど……」
食器を流し台に持ってきた二人は切った野菜をどうしようかと頭を悩ませる。
残っている材料でできる料理は、シチューかカレーぐらいしか二人は知らなかった。
「カレーのルウは……無いですね」
ルウなどを置いてある場所を確認するが無かった。
「ということはシチューしかないわね」
「ですね」
――しかし。
「ルウが無いわ!」
ルウの箱を手に取った涼香が目を見開く。
「えぇ……」
「どうしたらいいのかしら。買いに行くしかないわよね?」
「暑いんで嫌です。ちょっと待ってくださいね」
そう言って涼音はスマホでシチューの作り方を調べる。
確か前にシチュールウは簡単に作れると聞いた気がする。
「あ。ありました」
作り方を見つけた涼音は力強く頷く。
「あたしに任せてください。クリームシチューを作ります」




