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夏休みにて 12
「……またそうめんなの?」
「またそうめんですよ」
目の前のザルに盛られているそうめんを虚無の表情で見ている涼香。
夏といえばそうめん。夏休みの昼食といえばそうめん。なぜなら――この時期は謎にそうめんを貰ってしまうからである。
「一応野菜とか用意してますから」
涼音は千切りきゅうりと錦糸卵、ハムやネギなどを盛った皿も置く。
その様子を見ていた涼香は感情の無い声で言う。
「温かいそうめんを食べたいわね」
「じゃあ明日はにゅうめんにしますか?」
明日もそうめんで確定なのか。
涼香は聞こえないふりをする。
「そろそろ魚が食べたいわ」
「鰹だしで我慢してください」
どうしてそんな意地悪を言うのかしら? とでも言いたげな顔で涼音を見る涼香であった。




