夏休みの二年生の教室にて
二年生は三年生と違い、受験勉強などで学校に来ている生徒は少ない。
それでもやはり学校の方が集中しやすいため、全てのクラスが開放されており、生徒も数人見受けられる。
「で、どこのクラスに入るの?」
「んー、まあ私のクラスか檜山さんのクラスだよねー。人がいたら違うクラスも考えるけど――おっ、誰もいない」
そんなことでやって来たのは夏美のクラスだ。
時間も早いしまだ誰も生徒は来ておらず、教室のドアは開いていて冷房もついていなかった。
夏美は冷房を起動させるとドアを閉める。
「なんか冷房つけたばっかりの時は窓とか開けといた方がいいらしいよ」
「えっ、そうなの?」
「先輩が言ってた。その方が早く空気が入れ替わるんだーって」
「さすが水原先輩……」
「本当かどうか知らないけど」
「じゃあ試してみようよ!」
そう言って夏美はドアと窓を開けようとする。
「別にやらないくていいでしょ。朝だし、まだ蝉も鳴いてるし」
「なにその基準……?」
「先輩が言ってた。蝉は暑すぎたら鳴かないって」
「檜山さんって、本当に水原先輩と仲が良いんだね」
「別に普通でしょ」
「そうかなあ? 羨ましいなあ」
「なにその顔、ムカつくんだけど」
夏美の顔を手で隠しながら、涼音は顔を顰める。
「その顔、先輩みたい……。なんとなく、檜山さんって先輩と似てるんだよねー」
「綾瀬先輩と? どこが?」
「いやそのしかめっ面とか」
「あっそ」
「あー! その素っ気ない感じも似てる!」
「知らない。てか相談ってなに!」
夏美の相手をするのに疲れてきた涼音は、さっさと本題に入れと強引に話を逸らす。
さっさと終わらせてさっさと帰りたい。
今日涼香が合格すれば、もう恐らくきっと、少なくとも夏休み中夏美に関わることは無いはずだ。
早く終わらせたくても涼香のテストが始まる十一時ぐらいまでは相手をしないければならないが。
今から約二時間、それを考えただけで涼音の気持ちは落ちていくのだった。




