補習にて 3
結局、涼香と理子が真面目に席へ着いたのは十時頃だった。
「マジで……うっざい……」
三十分近くボケ倒された彩は、もう息も絶え絶え。やっぱ帰るべきだったと後悔していた。
「時間が無いわ、早く始めましょう」
意気揚揚と始める準備をする涼香に、彩はもう突っ込まないぞと、心を無にして答える。
「あ、うん。まず範囲教えて」
「えー、そこからぁ?」
しかし理子の言葉で、無になりかけていた彩の心に再び火がついた。
「あんたらが真面目にやんないからこうなってんだよ!」
正論の真っ正面豪速球が涼香と理子に直撃。
「そうね……やりすぎたと思うわ。ごめんなさい」
「調子に乗りました……、ごめんなさい」
「じゃあさっさと教えろ」
彩は、またどうせすぐボケるんだろ? と思ったため、ボケる隙を与えないような対応をする。
「基本的には期末テストの範囲よ」
「範囲は期末だけど、内容は結構簡単、問題数も少ない」
「これがそのテストよ」
料理番組のような流れで、違う日にやった小テストを彩に渡す涼香。
眉をひそめた彩はそれを受け取る。
「なんか、問一ばっかの小テスト。応用は捨てて基礎の確認って感じか」
小テストを確認した彩が分析を始める。
「定期テストもこんな感じだったらいいのに、と思うのよ」
涼香の言葉に、彩は小テストを返しながら答える。
「それじゃあテストの意味無いだろ」
「はーい綾瀬せんせーい。テストの意味ってなんですか?」
すると今度は理子が手を挙げる。
理子の問い掛けに彩は答える。
「授業でやったことの確認。ちゃんとそれを理解出来ているかどうか。知らないけど」
「おおー、賢い人だ」
「さすが彩ね」
「あーはいはい。じゃあ始めるから……って教科書持ってんの?」
「後ろのロッカーにあるわ!」
「机の中に常備!」
綺麗なウインクをする涼香とサムズアップする理子。
「そりゃよかった」
梅雨の湿度の目で答える彩だった。




