補習にて
夏休みだからといっても学校は無人になると言うわけではなく、部活動で学校に来ている生徒がおり、普段の学校とはまた違った賑わいを見せている。
そして部活動で学校へ来る生徒以外にも、夏休みの学校へやって来る生徒もいた。
その筆頭水原涼香。期末テストが赤点で、補習に招待され学校へとやって来ていた。
補習会場である三年生の教室、涼香の所属するクラス。
「さて、今日も手短に終わらせるとしましょうか」
「まあわたしの方が先に終わるけどね」
涼香の斜め前に座る、三田理子が返す。
「それはどうかしら」
涼香のクラスで補習に招待されているのはこの二名。他のクラスでも招待客はいるらしいが、各々所属するクラスで補習受けている。
補習と言っても小テストを解いて一定以上の点数を取るだけなのだが、補習に招待される生徒達である。小テストの勉強をしているはずが無い。
しかし早く合格しなければいけないため、学校へ来てから勉強を始める。
小テストが始まるのは十一時頃から、それまでは個人で勉強をしている。
分からない所があれば、その都度教師へ聞きに行くなり、学校へ来ている成績優秀者に教えて貰ったりする。
「テストなんて余裕よ! 今すぐ始めてもいいぐらいよ」
「同じく、水原にできてわたしにできないはずがない」
「ついてこれるかしら?」
机の上に筆記用具を出している涼香と理子がそんなやり取りをしていると――。
「あんたらなにしてんの?」
「あなたは⁉」
「綾瀬彩⁉」
「うざ……」
教室のドアを開けた彩が顔を顰めていた。
「他のクラスの成績優秀者がどうしたの? もしかして教えてくれるとか?」
「あら、気が利くわね」
「やっぱり辞めようかなって思ってる」
「それは酷いではないの」
「そうだそうだ、自分から首を突っ込んできたくせに!」
「なんで偉そうなの……?」
滅茶苦茶嫌な顔をしながらも、教室に入って来る彩である。
「さあ、私達に教えなさい!」
斯くして、涼香と理子の夏休みの補習が始まる。




