夏休みにて 11
シャワーを浴びた涼香と涼音、二人は部屋着に着替えてから髪の毛を乾かそうとしていた。
一時間も外に出ていなかったため、冷房はつけっぱなしだ、リビングに入ると冷たい空気が迎えてくれる。
「来なさい、お姉ちゃんが髪の毛を乾かしてあげるわ」
「前にもこのやり取りしましたよね?」
「常日頃からやっているのよ、そんなこと覚えていないわよ」
「いや常日頃からやってませんけど」
涼香が涼音を椅子に座らせる。涼音もなんだかんだ言いながら素直に座っていた。
ドライヤーの温風で涼音の髪の毛を乾かしていく涼香が、涼音の長く伸びる茶色い髪の毛に触れながら言う。
「ねえ涼音、髪の毛は切らないの?」
「切ってますよ」
「あらそうなの?」
「はい、あたし髪の毛染めてるんで、染め直すついでに切ったりとかしてますよ」
「知らなかったわ……」
「まあ家でやってますしね」
涼香は綺麗に染められている涼音の髪の毛を観察する。
涼音が髪の毛を染めてから、髪の毛が黒くなっている所を見たことがない。髪の毛を染めて時間が経つと根元が黒くなっているはずなのに。
まあ髪の毛を染めたことの無い涼香にはそこら辺の事情は分からないが。
「黒に戻さないの?」
「んー……、戻して欲しいですか?」
「どんな涼音も可愛いからどっちでもいいわ」
「えぇ……」
じゃあなんで聞いたんですか? と涼音は思いながら、大人しく髪の毛を乾かされるのだった。




