スーパーマーケットにて 2
両開きの自動ドアが開くと、冷たい空気が駆け抜けて汗で濡れた身体を冷やしていく。
「タオルを持ってくるべきだったわね」
涼香は溢れ出る汗を拭いながら、足早に店内に入る。
「ああ〜涼しい〜」
涼音もその後に続く。
涼香は真っ先に鮮魚コーナーへと向かう。冷蔵庫の冷気で更に涼もうという考えだ。
「それで、なに買うんですか?」
とりあえず鮮魚コーナーまでやってきた涼音は、服の裾をパタパタしながら涼香に聞く。
「言ったでしょう? 夏を感じたいだけだって」
まだ汗の引かない涼香は、汗が落ちないようにしながら、並ぶ魚達を眺めている。
「言いましたけど、たまには豪華な昼飯――とか言ってませんでした?」
「……確かに言ったわね」
今まで忘れていたらしい、涼香は目を丸くして答える。
「はあ、じゃあさっさと買って帰りましょうよ」
また暑い中歩くのは嫌だが、いつまでもスーパーでいる訳にもいかない。それにこのままの状態でいると、身体が冷えて風邪をひいてしまうかもしれない。涼香はひかないだろうが涼音は別だ、早く帰ってシャワーを浴びたい。
「そのことだけどね、涼音。よく聞きなさい」
そう言われた涼音は、気まずそうに立つ涼香を見る。
「ああ、財布忘れたんですね」
実は涼香だけでなく涼音も手ぶらできている。
「さすが私検定準一級ね!」
「帰りましょうか」
「そうね! 第一目標の『夏を感じる』は達成できた訳だし」
「昼飯は昨日の残り物がありますから。それに、なにか冷蔵庫にある物で作りますよ」
「それは豪華なお昼ご飯ね!」
「じゃあ、さっさと帰ってシャワー浴びましょう」
そう言って二人は、煮えたぎる真夏の真昼間、家まで走って帰るのだった。




