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夏休みにて 6
夏休み――それは襲い掛かる猛暑から身を守る休みのことである。
そんなある日のこと。
涼香はそうめんをちゅるちゅる啜った後、髪の毛を払う。
「この季節、外へ出るなんて愚か者がすることよ」
「先輩しょっちゅう外に出てるじゃないですか、補習で」
「………………」
涼香はヘアゴムで髪の毛をポニーテールにする。
「先輩?」
「この麺つゆ美味しいわね。鰹節の香りがいいと思うわ」
真顔になった涼音が真正面から見つめてくるが、涼香はそんなこと気にしない。
「食べないの?」
「……食べますけど」
涼音もそうめんをちゅるちゅると啜る。
「鰹節削りに行きたいわよね」
「いつですか?」
「夏休み中によ」
「愚か者じゃないですか」
「ふふっ、冗談よ」
「…………」
「…………」
それから互いに無心で、ちゅるちゅるとそうめんを啜り続けるのだった。




