檜山家にて 4
夏休みの宿題をしている涼音は、自身の前でテーブルに突っ伏している涼香を見ながら言う。
「先輩、宿題やりましょうよ」
「嫌よ」
しかし嫌だと即答された。
なんやかんやでそのうち、涼香は宿題を全てやるのだから無理にやらせる必要は無い――のだが、毎年毎年ギリギリになって辛い思いをしているため、涼音はコツコツと涼香に宿題を進めて欲しかった。
「まーたそんなこと言って、毎年後悔してますよね?」
「よく考えなさい。毎年それでも間に合っているのよ? ということは無理にやらないくてもいいではないの」
「まーたそんなこと言って、毎年後悔してますよね?」
「どうして二回も言ったの?」
今まで突っ伏していた涼香がようやく顔を上げる。
「わーここの問題難しー」
涼音は再び宿題に取り掛かり始めた涼音の右手を押さえた。
「無視しないで」
「なんですか? どうせ宿題やる気ないんですよね?」
手を止めた涼音が冷ややかな目で涼香を見る。
「……やるわよ」
口を尖らせた涼香は、ゆっくりとした足取りで自宅に宿題を取りに行こうとする。
リビングを出て、玄関へと向かい、ドアを開く。
ガチャンとドアが閉じる音を聞いた涼音は一息つこうとしたが、またすぐにガチャンという音が聞こえたことに首を傾げる。
するとすぐにリビングのドアが開き、なにも持っていない涼香が現れた。
「暑くて出られないわ!」




