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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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23/929

涼香の部屋にて 2

 ある日曜日の朝。


 涼香(りょうか)の部屋にやって来た涼音(すずね)は困惑気味に問いかける。


 いつもなら昼過ぎに来るのだが、今日は朝早くから涼香に呼ばれたのだ。


「先輩、どうしたんですか?」


 ベッドの上で固まっている涼香は、目だけ動かして涼音を見る。


「……動きたくないわ」


 時刻は七時、休日は昼過ぎまで眠っている涼香にとって七時という時間は、平日で言うと三時ぐらいの感覚だ。


「お腹すいたわ……」


 身体を壁に預けて涼香はぼやく。もしかして連絡をしてからずっとそうしていたのだろうか?


「今日はケーキ無いですよ」


「なんですって……⁉」


 涼音の無慈悲な言葉に涼香はノックアウト。ベッドに寝転んだ涼香は唸り声を上げる。


 起きる気は全くないようだ。涼音もそれはある程度分かっているから別にいいけど。


「ん~」


 涼香は両腕をパタパタさせている。起こせということだろうか? 涼音はベッドに上り涼香の手を取り引っ張る。


 引っ張られて身体を起こした涼香は、涼音をキャッチ、再び倒れる。


「もー、たまには早起きしましょうよ」


 涼香に抱きしめられている涼音は困った風に微笑む。


「起きてるじゃないの」


「活動しようってことですよ」


「寝るのも立派な活動よ」


「そういうもんですかねえ」


 先輩といられるのだから別にいいか、と、口には絶対に出さないけどとりあえず納得することにする。


 しかしそれはそれとして、涼音はアラームを一分後に鳴るように設定する。


 そして、時は来た――。


 ギャラルホルンと化した涼音のスマホが吹き鳴らされる。週末戦争(ラグナロク)の到来、涼香の眠気とアラームの戦い。


 ――勝負は一瞬だった。


「おはようございます」


 跳ねるように起きた涼香は若干涙目になっている。


「涼音が意地悪するわ」


 シクシクとウソ泣きを始める涼香、目が覚めたようでなにより。


 涼香をベッドから降ろす、乱れた髪を涼音は手で梳きながら、背中を押して部屋から出ていく。


 一階では涼香の両親が朝食の準備をしてくれている。今日は出かけたいと思っている涼音だが、実際に出かけるかどうかは、朝食を食べてから涼香と相談することにしよう。


 涼香(せんぱい)といられるなら、どこでも楽しいから。

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