車の中にて 3
蝉も鳴かない殺蝉級の暑さの中、涼音は涼香に誕生日プレゼントを買ってくると言って、一人外へ出ていた。
スマホを確認すると若菜からのメッセージで『もうすぐ着く』と来ていた。
その言葉の通り、すぐに一台の車が涼音の家の前にやってきて止まった。以前涼音も乗った菜々美の車だった。
後部座席の窓が空き、中にいたグラサン着用行っちゃうぜナイトプール的な雰囲気を醸し出した若菜が立てた親指をくいっとする。
「へい彼女、乗りな!」
一瞬乗りたくないと思った涼音だったが、すぐに気を取り直すと菜々美の車に乗り込む。
車の中は冷房が効いており、こんなクソ暑い中でも全く汗をかくことなく移動することができる。
「本当にありがとうございます」
車の中にて入った涼音は車を出してくれた菜々美にお礼を言う。
「全然いいよー」
菜々美が笑って返す。
「暑かったらプレゼント選ぶのに集中できないもんね」
助手席に乗っていたここねが涼音に笑いかける。
「そうなんですよね。プレゼント選んでいる最中に汗だくで帰ることを考えたくないですから」
車がゆっくりと速度を上げ、涼音の家が段々小さくなってくる。
「そういえば涼音ちゃんと涼香って通っていた小学校違ったんだったよね?」
サングラスを取った若菜が遠くなる景色を見ながら涼音に聞く。
「えっそうだったの?」
「あれ? 先輩から聞いていませんでした?」
「私も菜々美ちゃんも聞いていなかったよ」
「知ってたの私だけ?」
「どうなんでしょう?」
「「「「………………」」」」
「なんで黙るんですか」
困惑する涼音。
「はいっ、じゃあそこんところの説明よろしく」
なんとなく雰囲気を読んだ若菜が助け舟を出す。
「あっはい。えーっと、あたしと先輩は通っていた小学校は違います。家が斜向かいなのに違うんです。校区が丁度分かれたんですよね」
「はいオッケイ! そういうこと」
「なんで若菜がテンション高いのよ」
若菜にツッコむ菜々美をよそに、ここねは涼音に質問する。
「じゃあ小学生の頃は涼香ちゃんと関わりが無かったの?」
「いえ、小学生の頃から毎日一緒でしたよ」
「仲が良いのに別々の小学校って嫌じゃなかった?」
ここねの言葉に涼音は悩む。
「うーん……。嫌だといえば嫌だったと思いますし、でも学年が違うから一緒だったところでそこまで一緒にいられるわけでもないので。放課後一緒に過ごせるのは変わりませんし……」
歯切れの悪い答えに、ここねは申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんね、変な質問しちゃって」
「いえいえ、こちらこそすいません。よく分からない答えになってしまって」
当時の気持ちがどうであったのか、涼音自身もよく憶えていない。
涼香はどうであったのか、聞けば答えてくれるのだろうか。
少しそんなことを考えながら車に揺られる涼音であった。
「それでどこに向かうの? あっ、できるだけ交通量が少ない場所ね」
「「「………………」」」
「黙らないでよ!」




