檜山家にて
どうでもいい話、水原家で使う食器は、殆ど全てがプラスチック製の物や、木製の物だ。
理由は単純――涼香と涼香の父がよく落とすからだ。
そのため涼香が陶磁器の食器を使う場面は、檜山家へ来ている時ぐらいだった。
「食器はあたしが片付けるんで、先輩は触らないでください」
しかし檜山家もほぼ涼香の家であるため、プラスチック製食器の導入を検討している状態だった。
「気を使わなくてもいいのよ」
「あーもう! 触らないでください!」
昼食を摂り終えた二人、涼香が自分の使った食器を台所へと持っていこうとするが、涼音に全力で止められていた。
「どうして私に食器を触らせてくれないのかしら、私だって皿洗いぐらいできるわよ」
「知ってました? 食器って落としたら割れるんですよ」
「それぐらい知っているわよ」
「まあ調理実習とかたまにありますもんね……」
「そう、あれば私が小学生の頃――」
「はいはーい。無駄な回想はまた今度にしてくださーい」
その隙に涼音は食器を全て台所へと持っていく。
手際よく食器を洗い、水を切って乾燥機の中に入れておく。
「なんか……暇ですね」
涼香の前に座った涼音が、ぐで〜っとテーブルに被さる。
夏休みはまだ始まったばかり。宿題もまだ残っているのだが、如何せんやる気が出ない。
「いつも通りではないの」
「そーですねー」
ため息交じりに返す涼音であった。




