涼音の部屋にて 11
夏休みのこと。
涼音の部屋に来ていた涼香は、涼音が誕生日プレゼントで貰ったアルバムにL判の写真を一枚一枚入れていた。
「何枚あるんですか……?」
涼香の傍らに積まれている写真を見て、汗を垂れ流した涼音は恐る恐る問いかける。
「数えてないわよ」
「えぇ……」
貰ったアルバムだけで足りるのか、あといつの間にこんなに写真を撮られていたのか。
確か涼香に写真を撮っていいかと聞かれたのは今年の四月だったはず――にも関わらず、中学の時や小学生の頃の写真もあった。
「ほら、黒髪の涼音よ」
写真のビル群からペラリと一枚涼音に見せる。
「なんでその時の写真持ってるんですか」
「可愛いからよ!」
「えぇ……」
そう言ってその写真を手に取る。
写っていたのは、まだ髪が黒かった頃の涼音――中学の時だろう。
髪の毛を染める前、髪型も今のようなおさげではなく、涼香みたいに髪の毛を下ろしている。中学一年生頃の髪型だった。
「こういう時もありましたねー」
もういいやと、写真を涼香に返した涼音は他の写真を取る。
次の写真は、髪色こそ黒だが、髪型は今と同じおさげにしている涼音のしかめっ面の写真だった。
「二年生の時かしら?」
涼香が横から覗き込んでくる。
「ですね」
涼香に写真を渡しながら、涼音は気だるげに他の写真を探す。
「うわっ、こんな昔の物まで」
「これはお母さんが撮ったものね」
次の写真は、更に時を遡り、小学生の低学年頃の涼香と涼音が写っていた。
写真の中の二人は、仲良くクッキーを作っている様子が見て取れた。クッキー生地の型を抜いている場面だ。
互いに笑い合う二人を写した写真は、見ている者を癒してしまう波動を放っているような気がした。
「この写真は世界に広めないとダメね。世界平和を実現できそうだわ」
「なに言ってるんですか」
「ちょっと見せてくるわ!」
「誰に⁉」
立ち上がって部屋から出ていこうとする涼香を、慌てて止める涼音であった。




