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水原家にて 4
夏休みのこと。
「見なさい涼音! この広大なビーチを!」
水原家のリビングでテレビを見ていた涼香と涼音。
そんな海水浴場が映ったテレビの前で、涼香は手を大きく広げていた。
「人多いですね。あたし人混み嫌いです」
広大なビーチを埋め尽くす人を見て、思いっきり顔を顰める涼音。そんな涼音の様子を見て肩をすくめる涼香である。
「やっぱり涼音は夏が嫌いなのね。いつからだったかしら?」
「うーん……。そう言われると、いつからなんですかね?」
二人は揃って、目だけで部屋の照明を見る。
しばらくテレビの音だけが聞こえていたリビングで、先に口を開いたのは涼音だった。
「中学生ぐらい?」
「そうだったかしら? 私の記憶だともう少し前のような気がするわよ。小学生……高学年ぐらい?」
「あー。そう言われるとそうかもしれませんね」
「ならそれ付近ということにしましょうか」
「そうですねー」
雑に結論を出した二人であった。




