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涼香の部屋にて 20
夏休みの夜のこと。
「天体観測したいと思わない?」
「別に」
「そう……」
撃沈した涼香はベッドに沈み込む。冷房はいらないんじゃないかと思うぐらい冷たい対応だった。
涼香も天体観測の趣味は別に無いが、なんとな~く、夏の夜と言ったら天体観測だろう、という適当な理由で提案しただけだった。
涼香の趣味が天体観測なら涼音も頷いたと思うが、趣味でないのなら頷く必要も無い。
「でも夜よ?」
「でもってなんですか。寝ますか? あたし帰りますね」
ベッドに腰掛けていた涼音は立ち上がり、部屋を出ていこうとする。
「いーやー! 夏休みなのよ! 家に帰らなくてもいいではないの!」
そんな涼音の腰に絡みついた涼香が駄々をこねる。
「冗談ですって」
そう笑って、再びベッドに腰掛ける涼音であった。




