水原家にて 3
「ねえ涼音。いくらなんでも……これは無しだと思うわ」
「カップ麺に失礼じゃないですか?」
涼香がシャワーを浴びている最中、涼音はカップ麺用のお湯を沸かしていた。
そして、涼香がシャワーを浴び終わった時を見計らいカップ麺にお湯を注いだ涼音。もちろん涼香はシーフードラーメンだ。
お湯を入れて三分経つかぐらいに、折よく涼香がリビングへとやって来て、テーブルの上に置かれたカップ麺を見て言ったのだった。
「別にカップ麺が嫌いではないのよ。でもね、私は涼音の手料理を食べたかったのよ。それを楽しみに暑さに負けずに帰ってきたというのに!」
「えぇ……」
ダンっとテーブルを叩く涼香。あまりの迫力に涼音は申し訳ない気持ちが芽吹いてくる。
「先輩……?」
「なによ」
恐る恐る涼音が声をかけると、鼻を鳴らした涼香が返事をする。
「三分、経ちましたよ?」
「ふんっ」
しかしそっぽを向く涼香。
「えぇ……」
涼音はどうしたものかと、冷蔵庫の中を確認する。
調味料類は割と充実していたが、料理の材料になりそうな食材は殆ど無かった。
「すみません先輩……なにも作れそうにないです」
「あーんして!」
「伸びますよ」
「はーやーくー!」
「えぇ……」
渋々といった様子で、涼音は涼香の向かい側に座り、自分の分のカップ麺を食べ始める。ちなみに涼音はきつねうどんだった。
「意地悪!」
まさかそんなことをされるとは思ってもいなかった涼香。涙と共に、ラーメンを飲み込むのだった。




