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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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215/928

水原家にて 3

「ねえ涼音(すずね)。いくらなんでも……これは無しだと思うわ」

「カップ麺に失礼じゃないですか?」


 涼香(りょうか)がシャワーを浴びている最中、涼音はカップ麺用のお湯を沸かしていた。


 そして、涼香がシャワーを浴び終わった時を見計らいカップ麺にお湯を注いだ涼音。もちろん涼香はシーフードラーメンだ。


 お湯を入れて三分経つかぐらいに、折よく涼香がリビングへとやって来て、テーブルの上に置かれたカップ麺を見て言ったのだった。


「別にカップ麺が嫌いではないのよ。でもね、私は涼音の手料理を食べたかったのよ。それを楽しみに暑さに負けずに帰ってきたというのに!」

「えぇ……」


 ダンっとテーブルを叩く涼香。あまりの迫力に涼音は申し訳ない気持ちが芽吹いてくる。


「先輩……?」

「なによ」


 恐る恐る涼音が声をかけると、鼻を鳴らした涼香が返事をする。


「三分、経ちましたよ?」

「ふんっ」


しかしそっぽを向く涼香。


「えぇ……」


 涼音はどうしたものかと、冷蔵庫の中を確認する。


 調味料類は割と充実していたが、料理の材料になりそうな食材は殆ど無かった。


「すみません先輩……なにも作れそうにないです」

「あーんして!」

「伸びますよ」

「はーやーくー!」

「えぇ……」


 渋々といった様子で、涼音は涼香の向かい側に座り、自分の分のカップ麺を食べ始める。ちなみに涼音はきつねうどんだった。


「意地悪!」


 まさかそんなことをされるとは思ってもいなかった涼香。涙と共に、ラーメンを飲み込むのだった。

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