夏休みの朝にて
夏休みの朝のこと。
「涼音! これは誰の髪の毛なの⁉ 説明しなさい! さあ!」
「なんですか……」
朝っぱらからうるさい涼香を、涼音は欠伸をしながら睨みつける。
「見なさいこの髪の毛を! これは誰の髪の毛なのかしら? 黒くて長いからここねかしら? まさか私に黙ってここねを部屋に連れ込んだの⁉」
涼香の黒髪と同じ長さの髪の毛を眼前に突きつけられた涼音は、面倒くさそうに欠伸を返した後、タオルケットを涼香からひったくり、眠りに落ちようとする。
「すーずーねー。こーたーえーなーさーいーよー」
涼香はそんな涼音の身体を揺らす。
「もー。なんですかあ?」
そこまで揺らされると、落ち着いて二度寝することもできず、渋々目を開ける涼音。
「これは誰の髪の毛かしら?」
期待に満ちた目で涼香が見つめてくる。一体どういう答えを期待しているのだろうか。
「先輩」
しかし寝起きの涼音は素っ気なく答える。涼香には悪いが、涼音は面倒くさかった。
再び眠りに落ちようとした涼音の隣で、涼香はほっぺたを膨らますのだった。




