夏休みにて 2
夏休みのある日。涼香と涼音は、冷房の効いている部屋で、向かい合って宿題をしていた。
「宿題って面倒よね」
「ですね」
涼香は夏休みの宿題として配られたプリントを眺めながら言う。
「海に行きたいわ」
面倒と言いつつも、地道に宿題を進めている涼音は、ため息と共に言う。
「行ってらっしゃい」
「……」
無言で頬を膨らます涼香。涼音は定規をしならせ、涼香の膨らんだ頬を引っぱたく。
「……いたいわ」
頬をさする涼香を放って、涼音はやけに静かな外を見る。
「……外の気温って何度か知ってます?」
涼香は暗算でもしているのか、空中でなにか書いた後答える。
「三十二度ぐらいかしら?」
「三十七です」
涼香は恐ろしいものを見たような表情を浮かべる。
「蝉って暑すぎると鳴かないんですよ。知りませんけど」
適当に言ったのだが、夏にもかかわらず、今は蝉一匹鳴いていない。もしかすると本当のことかもしれなかった。
「私達が小さい時は、暑いと言っても三十二度ぐらいではなかったの?」
「年々暑くなってますよね……。なんかこれ去年も言ったような気がしますね」
「タイムリープ……⁉」
「違いますね」
呑気に夏休みを過ごす二人であった。




