夜景スポットにて
夜景を見に行こうと、菜々美の運転で夜景スポットにやって来た涼香、涼音、ここねの三人を乗せた車は、遂に夜景スポットへと辿り着いた。
「着いた……。着いたぁ!」
「お疲れ様、菜々美ちゃん」
額の汗を拭った菜々美が、目を潤ませながらここねの方を見る。
「私頑張ったよ!」
「うん。ありがとう!」
満面の笑み(可愛い)を浮かべたここねが、菜々美の頭に手を伸ばそうとするが、菜々美はそれを反射的に避けてしまう。
まだ車内には涼香と涼音がいる。頭を撫でられるところを見られてしまうと爆発してしまう。
「さて、夜景を見に行きましょうか」
「あたし生で夜景見るのなんやかんやで初めてかもしれません」
「ということは私も初めてよ!」
そんな会話をしながら涼香と涼音は車を降りる。
菜々美とここねも、それに続いて車から降りる。鍵を閉めて夜景の見える場所まで移動する。
夜景スポットには、四人以外にも夜景を見に来ているグループが数組。いずれもカップルか友達同士だろう。
「見なさい涼音! 夜景よ!」
「そうですねー」
「もっと感動しなさい」
「わぁ! すっごく綺麗ですぅ!」
眼下に広がる地上の星が見える位置で涼香と涼音が二人ははしゃいでいる。
ここまで喜んでいるなら、菜々美だって運転したかいがあっただろう。
「ほら涼音、写真撮ってあげるわ」
そう言ってスマホを持っていた涼香はカメラのシャッターを切る。
「もう撮ってるじゃないですか……」
「上手く撮れないわね」
撮った写真を確認した涼香が画面を涼音に見せる。
涼音の顔は暗くて見えず、その背後に写る夜景の輝きも光が分散したようでくっきりと見えない。
「今は写真なんか撮らずに、この目でこの景色を見ましょうよ」
「そうねえ……」
そう言った涼香は、スマホをポケットにしまうと、涼音の身体を背後から抱きかかえる。
「ならタイタニックをしましょう」
「いやなんで⁉」
「そうね、逆だったわね。私が前に行くわ」
「えぇ……」
涼香がなにを言っているのかよく分からなかったが、まあ楽しそうだから別にいいか、と涼音は思うことにした。




