表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/927

体育館にて

 ある日の体育の授業、涼香(りょうか)のクラスは体育館での活動だった。


 準備体操を終わらせた涼香達三年生は、その場で座って体育教師の指示を待つ。


「今日の体育は……」


 厳かにそう告げる体育教師。生徒たちも固唾を飲んでその先の言葉を待つ。まるで神聖な儀式が始まるかのような静寂、体育教師はゆっくりと、生徒たちの間を抜けていく。音をたてぬよう振り返ると、体育教師が体育倉庫に入っていく。なぜか扉を閉めた。重たいのに。


 一秒、また一秒と時間が過ぎていく。そろそろ早くしてくれねえかな、という空気が漂い始めた時、音を立てて扉が開き、中からどのような死闘があったのか、ボロボロの体育教師がゆらりと現れる。


 体育教師が手に持つもの、それは――。


「ドッジボールをします」


 その瞬間、体育教師の持っているボールが宝玉のように輝いて見えた。


「「「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼」」」」」


 そして大盛り上がりである。ちなみに、表情こそクールだが涼香もそこに含まれている。


 早速コートの確認、チーム分けをして外野を配置。小学生にも負けぬ素早さで準備を終わらせる生徒達。


 準備完了の合図を体育教師にして、遂に試合開始のホイッスルが鳴り響く。


 涼香の通う高校は女子校だ。しかし、お嬢様学校ではない。つまり……。


「うおりゃぁっ」


「ぎゃあぁぁ!」


 阿鼻叫喚の地獄絵図、共学校のようなキャッキャッとした声ではなく、断末魔の叫びが響く。


少々過激な気がするが、一応涼香達は三年生だ。そして三年生といえば受験生だ、勉強のストレスなどが溜まっているのだろう。体育教師も「怪我だけは気をつけろ」とだけ言って後は見守っている。


 生徒たちは互いに、某パン工房のバターさん顔負けの顔面違う意味でアウトのボールを投げ合う。


 しばらく一進一退の攻防が繰り広げられ、やがてボールは涼香に向かって飛来する。


 ボールの速度、回転、軌道それらを読んだ(気になっている)涼香は正面でボールを受け止め――。


「ふぐぅっ」


 られなかった。腹部にクリーンヒット、空を切った腕でそのまま腹部を抱えて倒れてしまう。


「「「「涼香!」」ちゃん!」」


 クラスメイトが倒れる涼香に駆け寄る。


「うっ……みん……な……」


 涼香は仰向けになり、今にも命の灯が消えそうな雰囲気を醸し出す。


「血が……」「涼香ちゃん! 生きて帰るって言ったじゃない‼️」「大丈夫、まだ……助かるからっ」「止まって……‼️ 止まってよぉ‼️」


「ごめん……ね……みんな……。……ごめんね……涼音(すずね)……」


 クラスメイトの手を握りながら、今ここにはいない大切な後輩の名を呟きながら、涼香は――。




 一方そのころの涼音は。

「くちゅんっ」

 折れてしまったシャー芯を出しながら、再び小テストと対峙するのだった。


 


 外野に出た涼香を迎えたのはここねだった。


「大丈夫? 涼香ちゃん」


 一応念のため、茶番だろうけどもしものため聞いてみる。


「死んでしまったわ」


 大丈夫そうだった。


「生き返らないとだね!」


 適当に流したここねが奮起すると、丁度タイミングよくボールが飛んでくる。驚いてしまったここねをかばうように、涼香がそのボールをキャッチする。


 なんたる幸運、外野に出たばかりなのに内野に戻るチャンスがやってくるとは。


 涼香は内野に戻るという強い気持ちを持って振りかぶる。大事なのは体重移動だ。軸足から反対の足に体重を移動させ、下半身も使って腕を上から下に振り下ろす……はずだった。


「ふっ――ゔっ」


 力強く腕を振り下ろす瞬間、指が滑ってボールが真上に飛び、バスケットゴールに当たって跳ね返り涼香の頭を強襲する。今日の涼香は運が良かった。


 涼香の頭で跳ねたボールは相手コートを転がる。


 その後、白熱したドッジボールは両チーム勝ち負けを繰り返し、大きな怪我無く終わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ