表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

173/928

放課後にて 9

 ある日の放課後。


「ミーンミンミンミン」


 涼香は窓の外を向きながらミンミンゼミの真似をしていた。


「ジリジリジリジリジリ」


 その隣では若菜(わかな)がアブラゼミの真似をしており――。


「カナカナカナカナ」


「ツクツクオーシツクツクオーシ」


 などと、クラスメイトが一丸となって蝉の鳴き声を真似ていた。


 そんな教室内を恐ろしいものを見たような表情で見ているのは菜々美(ななみ)である。菜々美はとりあえずここねだけを避難させていた。


 終礼が終わり、ここねを迎えに行こうとこのクラスにやって来た時、ちょうど涼香が「鳴いているのがクマゼミだけでは味気ないわ」などとほざいてこうなった。


 最初はクラス内の空気はいつも通り、なに言ってんだコイツ、というものだったのだが、涼香がミンミンゼミの真似をすると、催眠にかかったかのように蝉の鳴き声を真似しだしたのである。


「菜々美ちゃん……」


 抱きしめるここねが不安げな表情を浮かべる。早くどうにかしないといけない。菜々美は焦る気持ちを落ち着けながらどうするべきかを考える。


「なんですか……これ……?」


 そしてちょうどその時、涼音(すずね)が三階までやって来た。


「涼音ちゃん! よかった、来てくれた」


 これでこの異様な光景が終わるだろう。


「また先輩がなにかやらかしたんですね」


 涼音は呆れた声でそう言って教室内に入って行く。


「先輩帰りますよ」


 涼香の肩を揺らす涼音。


「おーい、せんぱーい」


 全く動じない涼香。涼音が揺らしても窓の外へ向かって鳴き続ける。


「先輩! もうっ」


 涼音は涼香の肩を前からペシンっと叩いてみる。すると涼香がクルっと九十度。涼音の方を見る。そしてガバッと木にしがみつくように、涼音に抱き着く。


「ミーンミンミンミン」


「「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」」


 涼音と菜々美の絶叫が、学校を揺らすのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ