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涼香の部屋にて 16
ある日のこと。
「涼音、ティッシュを取ってくれないかしら」
ベッドで寝転んでいる涼香は、ティッシュの近くにいた涼音に声をかける。
「どうぞ」
ティッシュ箱を持った涼音が腕を伸ばして涼香にティッシュを渡す。
「私のターン。ドロー!」
涼香はティッシュ箱を受け取らず、そのまま声を張ってティッシュを一枚ドローした。
ずびびっと鼻をかんだ涼香は、ティッシュを丸めてゴミ箱に狙いを定める。
「五……四……三……これが決まれば同点よ! 二……一……!」
「逆転じゃないんですね」
謎のカウントダウンを初め、一になった瞬間、涼香は丸めたティッシュを部屋の隅にあるゴミ箱に投げた。
ティッシュは綺麗な弧を描かずに、まっすぐにゴミ箱から離れた場所に飛んでいく。
バスケというより野球だった。しかも暴投。
「えぇ……」
「……」
のそのそとベッドから降りた涼香は、ティッシュを拾ってきちんとゴミ箱に捨てるのだった。




