涼音のバースデーサプライズ☆ 直前にて
今日、七月十五日は檜山涼音の誕生日である。
「遂に……この日がきたわ……‼」
終礼が終わった後、リュックを背負った涼香がそう呟く。
涼香はクラスメイト一人一人とアイコンタクトをとる。ここは任せたわ、と。
作戦はこうだ。まず、涼香がいつも通り涼音と帰ろうとする。その間、クラスメイト達が涼音のお祝いの準備をする。
そして、涼香が忘れ物に気づいたと言って、教室に戻ってきてサプラーイズ。という感じだ。
もちろんこの作戦の立案者は涼香である。
「任せたわよ」
そう告げると、涼香は教室を後にする。その後ろ姿は、魔王討伐のため、旅をする勇者のようであった。
終礼を終えた涼音は、いつも通り三年生の教室へと向かおうとしたのだが――。
「あれ? 先輩じゃないですか」
いつもなら教室で待っている涼香が、今日は既に階段を下りていたのだ。
「早く涼音の誕生日のお祝いをしたくて来てしまったわ」
すると涼音は声を潜めて、他の人もいますから、と言って涼香の先を歩く。
「やっぱり楽しみでしょう?」
「うるさいですね。黙って歩いてください」
更に歩く速度を上げる涼音。
「冷たいわね」
そして肩をすくめ、涼音を追いかける涼香であった。




