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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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放課後にて 6

 ある日の放課後。


「さあ始まったわ! 第……二十三回、ええと……アレよ! 涼音(すずね)!」


「なんであたしに振るんですか⁉」


菜々美(ななみ)!」


「え⁉ あ、じゃあっ――」


「時間切れよ!」


「ええ⁉」


「正解は、ここね!」


「週末の予定を立てようの会だよ」


 最後に振られたここねが、笑顔で手を合わせて答える。


「二十三回もやりましたっけ?」


「そんなことは適当でいいのよ」


 髪を払った涼香(りょうか)が黒板に、カッカッカッと『次の土曜日に遊びに行きたい』と書く。


「随分とアバウトね」


「そうね、あばうとよ、あばうと。菜々美のくせに分かっているではないの」


「涼香はアバウトの意味わかって無さそうよね」


「知っているわよ。そのくらい」


 そう言いながら涼香はスマホを見ながら答える。


「おおざっぱ。という意味よ」


 一つ賢くなった涼香である。


「もう先輩、脱線してますから」


 涼音が話を前に進めようとするが、涼香はスマホを見たまま。


「電車は通常運行しているわよ」


「ボケないでください!」


「仕方ないわね」


 肩をすくめた涼香はやっと話を進める。


「菜々美が免許証を取ったのだから、久しぶりに四人でどこかに出かけようと思うのよ」


「うん、だと思ったわ」


 菜々美は分かっていたらしく、腕を組んで頷くだけだった。


「ほんとすみません……」


 涼音が頭を下げるが菜々美は気にするなと手を振る。


「別に大丈夫よ、気にしないで。それより涼香はどこか行きたいところあるの?」


「そうねえ、特に考えていないけど……しいて言うなら電車では行きにくい場所かしら」


「電車で行きにくい場所……?」


 涼香の答えに菜々美は頭を捻るがなかなか思いつかない。


柏木(かしわぎ)先輩達は車でどこかに行ったんですか?」


 答えが出ないようなので涼音は違う質問をしてみる。


「えぇ……」


 なぜか菜々美が頬を染めて口をもごもごと動かす。


「初めて菜々美ちゃんと車で出かけたときは夜景を見に行ったんだ」


 菜々美の代わりにここねが答える。


「おー、夜景ですか」


「すっごく綺麗だったよ!」


 満面の笑みで答えここねの後ろで涼香の目が光る。


「夜景……アリね!」


「あ、決まりですか?」


「一度行っている場所の方が菜々美も安心でしょう?」


「そ、そうね」


 菜々美が頷くと、涼香は涼音とここねにも確認を取る。


「涼音もここねもそこでいいかしら?」


「異議なーし」


「わたしも大丈夫だよ」


 三人とも了承してくれた。


「これにて終了よ!」


 バンっと黒板を叩く涼香であった。

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