借り物競争にて 1.75
涼香と別れた涼音は、周りの視線から逃れるように退場門から出ていく。
順位は最下位、別に勝ち負けにこだわっていないからどうでもいいけど。
退場門から出ていった涼音は二年生の席へと戻らずに、三年生の席へと向かう。
もう自分が出場する競技は無いため、自由に動ける。
次は借り物競争三年生の部が始まる。涼香が第一走者のため、既に周りの生徒たちの注目は涼香に向いている。
ホッとしながら三年生の席へ向かうと、三年生の一人が涼音がやって来たことに気づいた。
「涼音ちゃんお疲れ様。大丈夫だった?」
「お疲れ様です。受け止めてくれた先輩に感謝ですね」
「ほんとにあれはナイスだったね。なんでアイツはいっつもそうなんだろ」
「こういう時だと割と完璧なんですよねー」
二人は顔を見合わせてため息をつく。変にドジをして問題を起こすよりマシなためなにも言うまい。
「そうだ涼音ちゃん。次は涼香の番だから、見える位置でいた方がいいと思うよ」
「え? ああー……、そうですね」
もし自分が涼香の見えないところにいたらどうなるのかを想像してげんなりする。
「先輩は二人の仲が良くて嬉しいよ!」
「うっ、まあ……はい……」
「照れちゃって可愛いなーもう!」
そう言いながら涼音の背中を押して、涼香が見える場所まで連れて行くのであった。




