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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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体育祭の直前にて

 今日は体育祭の日。


 朝から校舎内は騒がしく、人混みが苦手な涼音(すずね)はその光景を見ただけで辟易していた。


 椅子は既にグラウンドに出しており、教室に荷物を置いて簡単なホームルームを終わらせると外へ出ることになっている。


「けちょんけちょんにしてやるわよ」


 涼香(りょうか)が去り際にそう言って別れた。


 学年とクラス割りも涼香とは争い合う関係のため、今日の処理全般を涼香のクラスメイトに任せている。もちろん競技と関係の無いところでは涼音も手伝うがそう多くないだろう。


 初めて高校での体育祭だった去年を思い出して涼音はげんなりとする。


 涼香のせいで人混みにもみくちゃにされたり、写真の行列ができたりしてそれはもう大変だった。


 涼香が写真を求められるのはいい気分ではないがまだマシ、本当は嫌だけど。だがそれよりも嫌なのが、涼香が写真を求めてくる生徒に涼音との写真を勧めるのだ。


 当時は全て断ったが今年もそれをされたら嫌だなあ、とげんなりしている。


 ホームルームが終わり、涼音達はグラウンドへと移動する。ザワつく生徒達の間を縫って靴を履き替えた涼音は自分の先へと向かう。


 砂を被らないようにビニールのバッグに入れた水筒とタオルを持って目立たないように席へ着く。


 一年生はまだ五月のため、それほど団結感が無さそうにそわそわしていたが、三年生がやって来た瞬間一斉に歓声を上げる。もちろん二年生もそうだった。


 歓声が向かう先は当然涼香だった。


 体育祭が始まっていないのにこの盛り上がりよう。既に涼音を含め、涼香以外の三年生は疲れた顔をしていた。


 これからの苦労を考えると当然である。


 先輩をお願いします。という気持ちを込めて三年生の方を見ていると涼香と目が合う。すると涼香は涼音に向けて綺麗なウインクをする。


 まさかの不意打ちに更に一年生と二年生が盛り上がり、涼音は思いっきり顔をしかめるのだった。

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