表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/807

回転寿司にて

 下校時間を過ぎたころの、夕方の回転寿司店はまだ混む前。ドアを開けるとすんなりと席に案内される。そんな客がまばらな店内に二人の女子高生がいた。


「先輩、醤油取ってくれます?」

 

そう言うのは高校二年の檜山涼音(ひやますずね)。茶色に染められた髪をおさげにしている可愛らしい容姿の少女だ。


「はい」

 

そう言って甘ダレの入ったボトルを手渡すのは高校三年生の水原涼香(みずはらりょうか)。黒髪ロングヘアーを今は邪魔にならないようにポニーテールにしている、目尻のほくろが特徴の美人な少女だった。


「甘ダレじゃなくて醤油取ってください」


「ああ、こっちね」


 純粋に間違えた涼香は誤魔化そうと努めて冷静に振る舞う。


「涼音なら気づくと思ったわ」


「いやいや、先輩がドジっ子なのはみんな知っていますから」

 

だから誤魔化さなくてもいいですよ、と涼音は言うが、涼香は聞いていないらしく、レーンからマグロを一皿取っていた。

 

その様子を見ていた涼音は、先輩ってワサビあり食べれるんだなあ、と思いながらイクラを食べていた。


「ゔっ」


「あ、ワサビダメなんですね」


 鼻を押さえている涼香にお冷を渡す。受け取った水を飲み干した涼香は涙目になっていた。


「なんで言ってくれなかったの……」


「いやあ、先輩はワサビあり食べれるんだなあと」


「初めて食べたわ」


「今までよく同じミスしませんでしたね……」


 そう言いながら、涼音は新しいコップを取り出し、粉末緑茶を数杯入れてお湯を入れた。できた熱い緑茶を火傷しないように恐る恐る口をつけて飲んでいく。


「それはそうと、回転寿司店って寒いですよねー」


 もう五月だからと、ブレザーを着て来なかった涼音は身を震わせる。学校にいる間はブレザーを着ていると汗をかくほどの気温だったのだ。


「それなら、私のブレザーを貸してあげるわ」


 それを見越してブレザーを着て来た涼香である。


 礼を言ってブレザーを受け取った涼音はふと思った。自分が着てしまうと涼香が寒くなるのではないかと。


 しかしそんな心配は無用だと、涼香は得意げに微笑みながらブラウスの袖をめくる。


「大丈夫よ、私は厚着して来たから」


「……絶対暑かったですよね?」


「ここから出たくないわね」


 ため息をついた涼音は受け取ったブレザーに袖を通す。

 

残ったぬくもりが涼音の冷えた身体をそっと、優しく包み込んでくれた。

このお話が音声化致しました!

坂餅のTwitterにて掲載しております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ