第五話 時空迷宮
俺達は時空迷宮に来ていた。
一階層はゴブリンやコバルトと言った弱い魔物しかおらず詩音は空震でどれも一撃で仕留めていた。
あんだけゴブリンを嫌がってたくせに殺す手段を得た瞬間これだ。
そして俺は詩音の戦いぶりを見学していた。
詩音も実際に戦闘を行い、その中で成長しているようだった。
空震の扱いも徐々に上手くなっており魔力の無駄も減ってきていた。
「そろそろ休憩するか?」
「うん、そうする」
俺達は休憩ゾーンに入り腰をおろした。
因みに俺は各階層ごとにこう言った魔物が寄り付かない部屋を作っている。
「ふぅ…疲れたぁ…」
「お疲れさん、だいぶ空震にも慣れてきたんじゃないか?」
「そうだね、でも空震だけじゃキツい場面もあったわね…例えば多数の敵に囲まれた時とか一体一体にしか当てられないから苦労したわ…」
「それは一体一体に手を当ててから空震を発動させているからだろ?なら最初から発動させておけばいい」
「どういうこと?」
「結論から言うと拳に空震を纏えばいい。どうやるかは感覚で掴むしかないからよく見とけ」
俺は休憩ゾーンから出て一番最初に目に入ったコバルトを標的にした。
俺は空震を拳に纏う。
俺の拳の周りの空気は揺らいで見えていた。
そしてコバルト目掛けて拳を振り抜く。
すると、コバルトの腹に穴が空き力なく倒れた。
「ま、ざっとこんなもんだ」
「いや、意味わからないわよ!?何なのあの威力は!?」
「あれは空震の効果プラス物理攻撃があったからだ」
「……」
詩音はジト目でしばらく俺を見つめたあと、諦めたようにため息を吐き練習を始めた。
やはり最初は難しいらしく苦戦していた。
「む…」
「ぷっ…」
「…なによ」
「いや、地球にいた頃には想像出来ない姿なもんで。ほんとキャラ変わったなって思ってさ」
「うっさいわね…こんな世界来たら嫌でも変わるわよ!それにあんたこそ私より変わってんじゃない?」
「まぁな、中身も種族も変わっちまったな」
「その言い方ムカつくわね…」
「何でだよ…はいはい、練習練習!」
◇
「……あっ…」
詩音が拳に纏った魔力が霧散する。
どうやら纏うところまで出来たようだが殴ろうとすると意識が分散されて上手くいかないようだ。
「ま、練習あるのみだな、まだまだ魔力操作が未熟だからついでに練習しておくといい。魔力操作をマスターすれば空震の威力も上がるし纏って攻撃することもできる」
「…意外と大変なのね…」
「あぁ、俺も自分の能力を理解するのにそして実践で使えるまでにだいぶ時間がかかったよ。ま、今でも使いこなせてはいないけどね」
「へぇ…神でも苦労するのね」
神は全能だと思われがちだが得意な属性、能力だけであって全能ではない。
「ところでこの空震を纏う技に名前とかってあるの?」
「名前?」
「ええ、名前とかあった方がイメージしやすいと思うの」
「まぁ確かに魔法を使う上でイメージは大事だが、名前か…考えてなかったな…」
「…なら空神術とかどう?」
「空神術か…ま、いいんじゃないか」
「でしょ?空震と時空神であるあんたを懸けてみたの」
「ふ、ふ〜ん」
自分がモチーフにされてるのはなんだか恥ずかしいな。
だが、結構いいセンスをしていると思う。
「よし、もっともっと頑張らないといけないわね」
「あぁ」
前世では知る事もできなかったであろう詩音の良いところをこの世界に来てからはよく見るようになった。
恐らくこの世界にきて変わったところもあるのだろうが色んな意味で強くなっていると思う。
俺は詩音の評価を一段階上げて今後に期待することにした。
「さて…俺も俺でさっさと感覚を戻さないとな」
「あれだけのことをやっといてまだ本気じゃないって言うの?」
「まぁな、あんなのは序の口だ」
「なによ、神だからって私に嫌味!?」
「違う、違う。そう言うつもりで言ったわけではない。ただ、これだとダメなんだよ…」
「…なにかあったの?」
「いや、何でもない」
「…そう」
少し気まずい空気が流れたが気を取り直して魔物狩りを再開した。
◇
お互い夢中になって魔物を倒していると気づけば九階層まで来ていた。
次の十階層にはボスがいる。
と言っても今の詩音なら勝てるだろう。
詩音もそれなりに強くなっている。
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名前 朝田詩音
種族 人
Lv12
HP 1100/1100
MP 500/1800
力 60
防御 60
精神 90
俊敏 70
運 30
スキル 【空間魔法】【魔力回復Lv5】【空神術】
加護 【時空神の加護】
称号 【異界の勇者】
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【空神術】
*このスキルは時空神によって認められ、新しく追加された神スキルである。
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「あちゃ〜…」
「えっと…なに?」
「いや、空神術って詩音が名付けた技が俺が認めたことによって神スキルとなった」
「神スキル?新スキルじゃなくて?」
「それはな、あんまり詳しい事は教える事はできないがスキル化してない技術を神が認めると神スキルとして通常のスキルより強力なスキルとして生まれるんだ」
「へぇ〜いいじゃん。強くなったってことでしょ?」
「まぁな」
詩音は嬉しそうにボス部屋近くの休憩ゾーンに入った。
「ま、いっか」
俺も深く考える事はやめて詩音の後に続いた。




