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3 自分以外の「女」は要らないという義母

 何でこの子まで?

 いやさすがにそれは無いだろう、と私は思った。

 ともかく私同様ミュゼットも、屋根裏部屋へと移ることとなり、使用人にされることとなった。

 彼女は泣きながら私の部屋で、今までごめんなさい、と謝ってきた。

 別にいい、と私は答えた。

 彼女は私のことを使用人だと本気で思い込んでいたらしい。

 だからこそ、母親が自分を追い立てたことで、初めて私のことを異母姉であり、元々用意されていて不思議だった服やら小物が私のものだったと気付いたらしい。


「けど、何故彼女は」

「去年弟が生まれたでしょう?」


 ああ、と思い出す。

 夫人はこの土地に来てからようやく父の子供を妊娠したのだ。


「そうしたら、実は私はお父様の子ではない、と言い出したの」

「何ですって?」

「意味が判らなかった。けど、お母様はこう言ったのよ。あの頃囲われた辺りで別の男と付き合っていた、私はその男の子だって」

「いやそれだったらそもそも引き取らないでしょ?」

「お父様は自分の子だと確信しているわ。よく言っていたもの。当時お母様を射止めたのは自分だけだった、って」

「と、言うことはミュゼット、貴女は父の娘なのに、捨てられたってこと?」

「そう、だから訳がわからないのよ!」


 そしてうっうっ、と声を詰めて泣き出す。


「特に今、お父様が仕事で結構長く出ているでしょう? 今なら、と思ったのかもしれないわ」

「いやでも、それでも貴女本当の娘でしょう?」

「……今まで、時々不思議なことがあったのよ」

「不思議なこと?」

「お母様は私とお父様が楽しそうにしている時、時々ぞっとする程冷たい視線を向けてきたの」

「……何で?」

「判らない。でも、さっき私を突き飛ばした時、言っていたあの言葉」

「他の若い女が…… っていうもの?」

「ええ。だとしたら、私は娘というより、お父様に近づく女、に見えている…… そう、同じ家の中に若い女が綺麗な格好をしているのが嫌なのよ。アリサ貴女は使用人の格好になってしまったから、お母様の目にはどうでもいいものになったんだわ……」


 それは酷い、と私は思った。

 彼女が本当に父の娘であるかどうかは判らない。

 それでも産んだ夫人からすれば実の娘。

 それでも嫌なのか。


「私は一体どうすればいいの? 貴女の様に仕事をするにしてもすぐには……」

「耐えて」


 私は短くそう告げた。


「少なくともまだ私達はここから出て何とかやっていくには若すぎる」


 私の乳母のところへ送るという手も考えた。

 だが彼女は私可愛さでこの子のことまで保護してはくれないだろう。

 彼女をどうこうするなら私を寄越せ、ということになりかねない。


「そう、あと四年耐えて。そうすれば、何か変わる」


 ミュゼットは泣きじゃくってくしゃくしゃになった顔でうなずいた。

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