第七話
「「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥」」
なんとかオーガを振り切ったオレとミホは道端の地面にドスンと息を上げながら座る。
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥。ていうかアイツ、オレたち以外の人には殴りかからないんだな」
「はぁ‥‥‥はぁ‥‥‥ふぅ。そうだよ、オーガは無闇に何かを襲ったりなんかしないんだよ。それはどこの世界でも一緒なのかな。きっと気づかないうちに癪に触るようなことをしてしまってたのかも」
ミホのその言葉を聞いてオレは一瞬で確信した。
「おいミホ。お前のさっきの行動を思い出してみろ」
「え、さっき?」
ミホはう〜んと唸りを上げながら首を傾げる。
「は! ど突こうとしたのがいけなかったんだ!」
「違う! もう少し前だ」
ミホの意見を瞬時にぶった斬るオレ。
‥‥‥‥‥‥こいつ〜っこいつってやつは‥‥‥本当に本っっ当に、思い出しやがらねぇ!
尚も首を傾げ唸り続けるミホにオレの中にある答えを浴びせる。内心では怒りに溢れながらも、それはもう冷静に。
「あなたのバカ笑いが原因だと思います。いえ、絶対そうです」
「へ、バカ笑い?! 私バカ笑いなんてしたことないよ!」
「いやさっき『ふい! ふい! ふい!』とか言いながらオーガにめちゃくちゃ豪快に爆笑してたじゃねーか!」
「べ、別に普通でしょ。んま〜じで面白かったんだから」
「面白くねーよ! こっちはお前のとばっちりを食らってんだよ!」
「もう、仕方ないなーわかったよ。少しは私に責任があるみたいだからとっておきを見せてあげる」
全然少しじゃねーよ。と思いながらも『とっておき』とやらが少しばかり気になるので聞いてみる。まぁどうせしょうもない中二病のお遊び魔法に違いないんだろうが‥‥‥。
「とっておきってなんなんだ?」
オレが訊ねるとミホは一瞬溜めて「ふふん」と笑みを浮かべてから答える。
「聞いて驚かないでね。私のとっておきはなんと‥‥‥」
「なんと?」
次の瞬間、ついにミホのとっておきが明かされる。
「<錬金術>よ!」
「はいじゃあ早速やってみてください」
オレはミホに錬金術とやらをすぐにやってみせるよう促す。
「く〜、あなた私を侮ってるよね?!」
「早くやってください」
侮ってますよ。当然ながら。
ーーいやしかし、本当に錬金術を使えるというなら見てみたい。
「く〜! 腹立つ〜。見ていてね 私のこのーー」
ミホは胸元辺りで両方の手のひらを向かい合わせる。
すると。
パチっチリ、チリ、とミホの手の間から数ミリ単位の長さの静電気が迸る。
「お、おぉ!? 今度はマジのやつか!?」
今度ばかりはマジなやつだと思ったオレは期待の目をミホの手の間に向けている。
「いけ、いけー! 来い! めっちゃ強い武器〜」
ミホが半ば気合いで何かを錬金しようとしている。
パチっパチパチ‥‥‥‥‥‥。
もう一度静電気が迸り、辺りがシーンと静まり返る。
「‥‥‥やっぱりダメでした」
「さっきまでのオレの期待を返せ」