第六話
「ーーと、言うわけだよ」
少女がこの世界に来るまでに体験した出来事をあらかた聞き終えたオレは復唱をする。
「‥‥‥つまり、あんたは元々この世界とは別の世界の住人だと?」
「うん、そうなんだ! この世界の人達からしてみれば私は異世界人? ってことになるのかな。いや、でも今はもうこの世界にいるし異世界人ではない? ‥‥‥ややこしいなー、どうでもいいか。そんなことは」
‥‥‥続けて確認する。
「だけどその異世界で、なんと無様なことにお餅を詰まらせて死んでしまったと?」
「く〜! 無様とか言わないで! んま〜じで苦しかったのよ。んま〜じで!」
‥‥‥続けて確認する。
「そして、死んでしまった後に魂がたどり着いた場所が、あの世でもなんでもなくて夕焼け空がどこまでも続く世界だったと‥‥‥。そして、そこで待ち受けていたものこそーー」
「ーー全身白タイツ人間。白タイツではないのだろうけど、文字通り頭のてっぺんから顔、そして足のつま先まで白タイツを着ているかのような全身真っ白な謎の人物。『人間』とは異なる存在だとは思うけど敢えてそう言っておくよ。確か‥‥‥、自称<ナレーター>とか言っていたよ。なんでも、全ての世界を行き来できるんだとか。そして、さまざまな世界で繰り広げられていることを見物しながら、一人でひそかに実況、解説をするのが娯楽なんだって。さらっととんでもない事言ってるな、私‥‥‥」
全くだ! なんなんだそのナレーターってやつは! とんでもねーことを娯楽にしやがって! 神か!? 神様なのですか!?
‥‥‥続けて。
「そして、そのナレーターを名乗る存在の力でミホ? で良いんだよな? ミホはこの世界にやってきた‥‥‥。いわゆる━━━<異世界転生>ってやつか」
「そう。ナレーターに質問‥‥‥っていうか<選択肢>を与えられたの。私の故郷の世界で生まれ変わって赤子からやり直す‥‥‥、もしくは死んだ時の年齢、容姿、記憶を保ったまま別の世界に転生をするか、どちらかを選んでねって。私はこの通り後者を選んだんだ!」
「そうか‥‥‥」
ふむふむなるほど。まーったくもって訳がわからん。実に信じ難い話だが‥‥‥。とりあえず空から舞い降りてきたこの少女の名前は≪ミホ≫ということがわかった。
「その話が本当なら、あいつもおそらくはーー」
オレはチラッとさっきから向こうで突っ立っているだけの人物の方を見やる。
「うん。ナレーターが送り込んだんだね、きっと」
‥‥‥これはゲームのチュートリアルなんですか?さっきからオーガが唸りをあげながら、説明が終わるまで待ってあげるよーと言わんがばかりのスーパーウルトラハイパーフリーズを大炸裂させているのだが。
‥‥‥なんということだ。
ここにもう一人神様がいました。さっきの足がハマった時といい、そこのオーガはフリーズの神様ですか?足がハマる=リールロック的な感じですか?それが長く続けばフリーズですか?<説明が終わるまで待ってあげるよBONUS>ですか?
「ちょっとど突いてみる?」
さらっととんでもないことをぬかすミホ。
「いやいや、とんでもないフラグを立てるんじゃない!」
オレの制止も聞かずマジでど突いてみようとしているのか、オーガのもとへとツカツカ歩いていくミホ。すると次の瞬間。
「ぐおおおおおーーー!」
なんといきなりオーガのフリーズが解け、瞬時にミホに殴りかかろうとしたではないか。しかし、ミホはオーガが吠えた瞬間に身を翻しオーガの攻撃を間一髪回避して、オレの方へと全力ランナウェイをぶちかましてきた。
「それ見たことかーーーー!」
「大丈夫。とりあえず全力ランナウェイだよ!」
「ぐおーーらーー待てや貴様ら! 殴らせろ!」
オーガがいきなり言葉を発してオレたちに言ってる。やだ、めっちゃ怖いんだけど。
「ひーーーー!」
逃げるオレとミホをオーガが顔をやや下にさげて、角をオレたちの方に向けてものすごい形相で追いかけてくる。こっちは既に補習で疲れてるってのに何という仕打ちなんだ。