第三十一話
ここは宇宙ーー。
「あの子はそれなりに上手くやれているよねぇ?」
神の代理がまたしても地球を覗き見ていたーー。
「なんかちょっと早い気もするけど、おっ始めようか。君もそろそろ退屈になってきただろう。圧倒的強者くん」
「・・・・・・」
「もう、相変わらずだんまりだなぁ。まぁ、いいや。心苦しいけど転生者たちをーー」
神の代理の横にはフードを纏った人物がいた。その人物はずっと神の代理の話を静かに聞いている。
「皆殺しにしてきてくれる?」
***
時は過ぎて、夏休みも折り返し地点に突入した。
「皆でお祭り行こうよー!」
「今日は昼からゴブリン野郎とデスオリの予定が入っている」
「我輩は寝る」
「えー、花火見たくないのぉ?」
士郎の家ではなんの変哲もない会話が飛び交っていた。ゴブリン野郎というのは転生者だ。この約二週間の間に転生者が二人ほど増えたのだ。
「花火大会・・・・・・、もうそんなに日にちが経っていたのか。だが、オレにはなんの縁もござらん」
八月中旬に長尾にある大学のグラウンドで毎年祭りが開催し、二千八百発もの花火が打ち上がるのだ。
「ねぇ、風見ー」
「行かん! 素質を高める方が大事だ」
「寝る方が大事だ」
「んじゃ、行ってくる」
士郎は補習の支度をして、玄関へと向かう。
「・・・・・・」
『行ってらっしゃい』の一言を待っていたのだが、誰からも反応はない。
「行ってきます・・・・・・」
士郎は寂しい思いをしながらドアを開け、足を歩ませて行く。
*
今日もなんやかんやあったが、なんとか補習を乗り越えることができた。西岡と吉田と杉野宮と一緒に下校をした。
「ただいまー」
「おかえり。ど変態魔神」
「風見はまだ帰ってないのか」
「うん。なんか強くなるために必死になっちゃってて」
「お前は何をしていたんだ?」
「睡眠の質を高めてた」
美保のお腹にまた炊飯器が詰まっている。オレよりもお前の方がニートじゃねぇか、と心の中で呟く士郎。
「我輩は料理、掃除、洗濯だ」
「ご苦労だな。てか、お前はデスオリには行かないのか?」
「美保と同じく、我輩も別にそんなものに興味はない」
「へぇー。ま、魔王だもんな!」
「その通りじゃ」
「・・・・・・」
オレはふと何気ない会話の中で、オレとこの転生者達は隔離されているのだと感じた。デスオリや素質、こいつらにはきっと何かしらの使命があるんだーー。
「まぁ、そうだな・・・・・・。祭り、行くか!」
「えー、ど変態魔神と行くのは気が引けるんですけどー」
「うるせー! 浴衣を着た美少女を探しに行くんだよ!」
「我輩は構わぬぞ」
「よし、決まりだな! ・・・・・・・・・」
「士郎、どうしたのだ?」
「いや、なんでもない! 割と結構楽しみになってきたな」
「ーー?」
もし、使命があるのならこいつらはこんなところで油を売っていていいのだろうか?
こいつらのおかげで散々な目に合いもしたが、特にピンク頭。でも、それでも、補習ばかりのオレの夏休みに色をつけてくれた。本当はそれなりに楽しかったんだーー。
オレはーー、
「離れたくないな」