第二十九話
「いやー、やっぱりなんだかんだ言って転生者同士のバトルは大迫力だったなー!」
「ねえ、童貞で引きこもりでニートのそこの留年野郎。私の顔を見ながらそういうこと言うのは何故なの?」
「べーっつにー? 転生者の焦げパンの威力ってあんなに凄かったんだなーって思っただけだが?」
「ま、まぁまぁ二人とも少し落ち着いて」
オーガとエリスの《神昇り》が終了し、これから呪穴から現実世界へ帰ろうとしているところだ。美保も神昇りに参加する予定だったが、セシリーが強制ではないと言ったので、セシリーの呪いにより開いたこの<呪世界>にある民家の家のベッドで昼寝をしていた。
「エリスよ。最初はお前のことを甘く見ていたが、『圧倒的強者』ーー、恐ろしく強いな」
「ふふ、あなたもさっきみたいに泣かなかったデスわね」
「エリス。もう解くわね」
「了解デスわ」
セシリーが懐からまたしても何かを取り出す。
「セシリー殿。それは?」
「これは『星の魔石』。私の呪いは発動すると、簡単には解けないの。私が死んでも、どんな魔法をもってしてもね。呪いを解くには聖なるシスターの祈りを捧げてもらう、もしくは、星の魔力から作り出されたこの結晶の力を使うこと」
セシリーが星の魔石をエリスに使う。すると、浮かんでいたエリスがゆっくりと地上に着地する。
「実はこれも呪いだったのデスわ」
「それは一体どういうーー?」
「エリスに掛けていた呪いは《呪羽力》。見えない翼が自らを支配し、あの世へと羽ばたかせる呪いーー。つまりこの呪いに掛かると自殺をしてしまうの。これを自由自在に操れるエリスはやっぱり素質の塊なのね」
「そうデス! 私はすごいのデス!」
セシリーは恐ろしい力を使う転生者だ。だからデスオリには立会人でのみ参加する。しかし、とても温厚で優しい女性で、普段は見た目通りの美しいエルフだ。
セシリーはオレに<転生者>に関することを色々と話してくれた。
<転生の素質>。これは、転生者に限った話ではなく、この世に生きる全ての者にも存在する可能性。知恵、純粋な力、勇気、根性、など、この世に生きる全ての者が持っている要素のことを指す。
<神昇り>。通称"デスオリ"。転生者が素質を高めるための訓練のようなもの。神に匹敵するほどの力を目指す事を目的とし名付けられた。このデスオリはエリスの提案で生み出されたのだ。
<魔法経験>。これは今までに魔法を使ったことがあるかどうかを指す。元いた世界では手に取るように強力な魔法を扱うことができていたとしても、別の世界ではそうとは限らない。魔法の扱うには、その世界の魔力濃度が関わってくる。濃度が濃ければ濃いほど強力な魔法を放つことができるかもしれないが、結局は使用者の才能だ。容量良く魔力を扱うことができる者ならば少ない魔力で国を落とすこともできるだろうし、万人を救う回復係にもなり得るだろう。ちなみに魔法を使ったことがない者を<非魔法経験>と呼ぶ。