第二十八話
士郎はエルフに自己紹介と看病のお礼を済ませる。エルフは名前を≪セシリー≫だと名乗った。
「オーガ君、これを飲みなさい」
美保はオーガにポーションを飲ませる。すると黒焦げになり白目をむいているオーガの傷がみるみる癒えていく。
「美保さん、あなたも参戦デスわよ」
「え、なにが?」
「<転生の素質>を高め合うのデスわよ」
「なにそれ?」
「な・・・・・・。ナレーターから何も聞いてないのデスか?」
「話の途中で寝ちゃってたからね。そしたら叩き起こされて『君、ちょっと転生してきて』って言われて放り出されたよ」
神の代理と自称しているナレーターはかなりアバウト。
「それでは早速始めます。《呪空間》!」
セシリーが唱える。すると、空間に歪みが生じ、穴が開く。早速穴に飛び込むと、禍々しい空が広がる長尾と酷似した町が広がっていた。
「うわ! スッゲー魔法だな」
「士郎さん、これは魔法ではありませんよ。これは呪いの一種です。空間そのものに呪いを与え、歪ませる。今私たちが立っているこの呪いのドームの中は風景だけはいつもと変わらない街ですが、全く別の代物です。いわば、異世界と言って良いでしょう。家をいくら壊そうとも現実世界にはなんの支障もありません。好きなだけ暴れることができるのです」
***
「うおおおおお!」
「食らいなさい、泣き虫オーガ!」
回復したオーガとエリスが一戦交えている。士郎と美保はセシリーからエリスのことを聞かされる。
「『圧倒的強者』。これは、《神の代理》が素晴らしい素質を秘めるたった一人の者に与える称号。あの子はーー、エリスはこの称号を与えられたのです」
「そんなもの与えて、ナレーターは一体何をしようってんだ?」
「わかりません。あくまで勘ですが、ただの暇つぶしかと」
「私暇だから帰っていい?」
「お前! しっかり素質を高めろよ!」
呪いを与えられ歪んだ空間、<呪穴>に潜ろうとしているピンク頭を士郎は引っ張り出す。
「この町頭がおかしいのが増えてきたんだし、強くなれよ!」
「君には関係ないことじゃん」
「お前冷たすぎるだろ」
「頭のおかしいーー……」
「あ、別にセシリーさんのことじゃありませんよ!」
士郎の発言に悲しみに暮れるセシリーが懐から何かを取り出した。
「やっぱり、私、私なんてええええええ!」
「「ひ、ひいいいい!」」
セシリーは藁人形を地面に何度も何度も何度も何度も打ち付ける。
やっぱりこの街は頭のおかしい奴らばっかりだーー。




