第三話
おっぱ‥‥‥じゃなくてヨーコ先生が立ち去ったあと、西岡と吉田の言い合いが時折行われていたが、それ以外のオレを含む生徒達は割と真面目に課題に取り組んでいた。
「あ‥‥‥」
消しゴムを落としたオレはそれを拾おうとするが。
「どうぞ」
「あ、どうも」
代わりに拾ってくれた隣の席の男子生徒に軽くお礼を言う。
すると。
「ねぇ君、ペン回しってできる」
男子生徒から質問が飛んでくる。
「え? いや、したことないな。できるのか?」
突然の質問に少しびっくりしたがオレは質問に答え、聞き返すと。
「できないよ」
とてつもなくツッコミたくなる答えが返ってきた。
なんだこいつ。
今すぐここで「いや、できないのかよ!」とツッコミを入れてやりたい。
だがオレはそんなことはしない。そんなことをすれば他の補習の生徒たちの集中を削いでしまうことになるだろう。なので。
「あ、あぁそうなのか。できたらちょっとかっこいいかもな。そら! ノーマル! ソニック! あ、落ちた」
学校の奴らがやっていたのを見よう見まねでやってみるがあえなく失敗する。
「ほら、ちゃんと集中してプリントしないと」
「あ‥‥‥す‥‥‥すいません」
ペンを拾ってもらった上に注意までされてしまったオレは頭を2、3回ペコペコさせる。拾ってくれた生徒はすでにプリントに集中している。
「‥‥‥」
無感情な表情で窓の外を見上げる。真夏の強すぎる日差しに思わず左腕で両眼を覆った。
(なんでなんだーー)
心の中でそう思った。それはそれはとてつもない落ち着きを宿してーー。