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オレの(空想!?)異世界転生日記!!  作者: 西住SDXDXDXDX
第四章 『戸籍を取りに行きます』 〜公開お◯に逝!!〜
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第二十六話

「ーー・・・ふう。さて、いつまで泣いているのデスか?」


 ようやく笑いが収まったシスターは戦う用意はできている様子だ。しかし、当のオーガはというと未だに泣きじゃくりとても戦える状態とは言えない。


「・・・しょうがないデスね。他をあたることにしまショウ。先ほどの二人の女の子といい、この町には他にも強そうな者たちの気配がシマスワ」


「待て」


 シスターが何処かへ飛び去ろうとしたその時、オーガから低い声が出る。


「なーんだ。やっとやる気になってくれまシタか」


「お前は俺の大事なものを奪おうとした。その罪は重いぞ」


 ついさっきまで子供のようにめそめそしていた様子が一瞬にして一変するやいなや、オーガは地面を蹴りジェットエンジンのような爆音をたててシスターへと高くジャンプをする。


「ふふ。それは怖い怖いのデース」


 オーガの襲撃を迎え撃たんとするべく雷鳴の如き速さで光の巨大ライフルを構えるシスター。そして、目の前の鬼の体全体を捉えたライフルの銃口が今ーー、


「ヨイショ」


 引かれる。


「お、オーガあああ!」


 あまりにも至近距離で放たれた無慈悲な光弾をオーガは躱しようも無く呆気なく食らってしまう。


「さっき撃ったのよりも数倍の威力に上げたのデスよ。これは防げまセンワ」


 被弾したオーガを中心にモクモクと黒煙が広がる。今の一撃では流石のオーガもノックダウンといったところだろう。そう思った矢先にその予想は大きな間違いであったと認識させられる。


「おい、俺がここにいなかったら住民が消し飛んでいたぞ」


 黒煙の中から完全に無傷とまでは言えないがまだまだ堂々たるオーガがオレの前へと着地する。


「ーー中々やりますワネ」


「士郎、ここに居てはあぶない。遠くへ離れておいてくれ」


 確かに何の力も持たない高校生がここに居ても何の役にも立たないだろう。これは転生者同士? の戦いなのだ。部外者のオレが関与できる問題ではない。


「わ、わかった。死ぬんじゃねぇぞ」


「なぁに、これは別に殺し合いじゃない。心配するな」


 士郎がその場から去って行き、一人残されたオーガは再び鋭利な眼光をシスターへと向ける。


「あなた一人で心細くはありまセンか? あの少年も()()の役に立てると思うのデスが」


 依然として鬼の覇気に臆することのないシスター。それどころか皮肉を帯びた言葉を返すほどだ。


「随分と余裕なんだな。わざわざ助言をしてくれるなんて」


「私はシスターなのデース。これくらいの善行は日常茶飯事デスよ」


「町の人たちを殺そうしたやつがシスターだと? 笑わせるな」


「あなたなら防ぐと分かっていまシタからね」


「そうなのか。だが、魔力がほとんど枯渇しているこの世界でどうしてお前はそれほどの魔力を有することができる? お前は何者だ?」


 大気中から直接魔力を吸収できる業を用いても、その者の力量にもよるが雀の涙程度の魔力が補充されるのみだ。真桜のように広範囲で吸収できればある程度の量は溜めることができる。先のシスターの魔法はかなりの魔力を使うため、この町に存在している魔力量では数時間に一発放てるかどうかだ。


「とーっても簡単なことなのデスよ。ただ祈れば良いのデース」


 シスターはライフルを消滅させ、両手を祈る様に繋ぎ合わせる。そのシスターの様子は、あまりにも無防備で、純粋で、何かを夢見る幼き少女の様だ。しかしオーガは何をするでもなく、嘲るように微笑を浮かべる。


「まさかとは思うがあの得体の知れない()()()()に祈ってるとか言わないだろうな」


「違うのデス。私が祈るのは神じゃない。この天空の、そのまた遥か彼方の世界(うちゅう)に存在する()()()なのデス」


「星? それがお前に力を与えるのか?」


 オーガが問うと、シスターは目を開かせて天空にその手を翳す。


「そう、お星様デス! お星様にお祈りをすることで魔力を与えてくれる<星の御加護>、そして、お星様を信じ、お星様に祈りを続けていく内に<信星魔法(しんせいまほう)>をも授けて下さったのデス」


「星の御加護ーー。つまり、お前の魔力の源は星ということか」


「そうデス。そして、これがーー」


 シスターの翳した手の先端から無数の煌めく光が出現する。その光は瞬く間に収束し、一つの形を模っていく。


「それが授かったとされる魔法か」


「そうなのデス! 信じる星と書いて<信星魔法>」


 シスターの手に先ほどの巨大な光のライフルが顕現する。それを見てようやくオーガは顔に焦りの色を浮かばせ始める。星が魔力の源ーー、それは実質無限大の魔力を意味し、いかんせん信星魔法の一発一発があの威力なのだ。


「ふ、まさかこの町にお前のようなチート野郎が存在していたなんてな」


「チート野郎じゃないのデス。私の名前は≪エリス≫。何卒ぉ、よろしくデス!」


 自己紹介と共にエリスは銃口を真っ直ぐオーガへと向ける。


「(あ、ちょっとやばめになってきたかも。あいつ空飛んでるし、攻撃当たらないし・・・、どうしよ)」




***




「はぁ・・・はぁ・・・。それにしても葉子先生達はどこに行ったんだ?」


 オレはオーガとシスターの元から離れ、適当に走り回っていた。風見達を探し出して、あわよくば中二病のピンク頭を見つけてオーガの戦いに参戦させようと思っていたのだが、これが中々見つからない。


「ふぅ。ちょっと休憩」


 時はまだまだ夏真っ只中だ。熱中症にならないように笹谷公園の影のベンチで士郎は座りこむ。オーガがピンチではあるのだが、士郎はその辺にいるようなただの男子高校生で、家に引きこもってゲームをして、()()()()をするのが日課のニートなのだ。体力など持つわけがない。それにピンチなのは士郎も一緒だ。なにしろ夏休みの宿題に一つも手を付けられず終いなのだ。


 留年を回避するためには、まずはこの夏休みが重要だ。補習を全て受け、宿題を完遂する、それが今のオレの関門だな。


「このまま帰ってゲームでもするか・・・」


 頭の中で成すべきことをまとめたはずなのに、せめて宿題をやろう、という気にならない自分に嫌悪感を抱く。


 そのまましばらくぼーっとしていると夏の日差しに汗だくになり熱くなった体を癒すような心地よい微風がオレの体を通過した。あまりの気持ちよさに瞼が段々と重くなってくる。うとうととしながら瞼を開いては閉めるという工程を数回繰り返すが、すぐに耐えきれなくなりベンチの背もたれを枕の代わりにして頭を預ける。


 このまま天に登っていくのではーー、と思いつつなんとはなく目だけを動かし公園のグラウンドの方を見ると、ぼやける視界の中をまるで微風が具現化したようなものがすーっと横切る。


「ーー!」


 眠気が次第に薄れていくのと同時に瞼は元気を取り戻していく。オレの目は一気にその姿に釘付けになり、その透き通るような姿と存在感に士郎は思わず呟く。


「ゆ、幽霊ーー」


 そう思いつつも、オレは少しも恐怖心を抱かなかった。白いワンピースに麦わら帽子、地に着きそうな程の長い髪は風見と似たような金色をしており、胸が如何程かはここからでは見えにくいが、女性にしては割と高身長のように見える。まるでラノベや童話に出てきそうな容姿にオレは『美』そのものを感じた。

 ーーその女性(そよかぜ)は羽ばたく蝶を目で追いかける内に偶然にもベンチに座る少年と目が合うと、気恥ずかしく感じたのかにっこりと笑ってこめかみから伸びる長い髪を()()耳にかける。一方の少年は顔を赤らめて目を逸らしてしまう。


「悪気はなかったんだけど・・・」


 少しへこみながらその場で腰を下ろし、少年の気を悪くしてしまったという罪悪感を、足元に生えていた花に宥めてもらう女性。花が喋るなどということはないが、割とショックな出来事だったので()にもすがるという思いの現れだ。


「きっと照れ屋さんなのね」


 本当にそういう風に見えたのか、自分にそう言い聞かせることで気持ちを落ち着かせようとしているのか。それを知る一部始終を見ていたであろう自分を見上げている小さな花ーー、を


 グシャ!


「どうして皆そうなの?」


 きっと様々な困難を乗り越えてようやくこのギラギラ輝くお日様の元に咲き誇ることが叶ったのであろう花の顔を握りつぶす。

 その女性は懐から釘とトンカチと、そして、()()()()を取り出し近くの木に打ち付ける。


「もうやだやだやだやだ!」


 打ち付けたとある物の上から更に引っこ抜いた花を打ち付ける。それはもう、何度も何度も何度も何度も何度も。


「生まれ変わったら何か変わると思っていたのに・・・」


 少年と顔を合わせた時とは打って変わってこの町に住む鬼にも劣らぬ形相で何度も打ち付け、花は木っ端微塵だ。


「はぁ・・・、ちょっとだけスッキリ」


 ストレス発散を終えた女性は小道具を懐に仕舞う。そして、その場を後にしようとしたのだが、まだ心残りだったのだろうか、もう一度少年を見やると、少年はベンチの前で倒れていた。


「え、大丈夫ー!?」


 慌てた女性は少年の方へと駆け寄って行く。


「君、君! しっかり!」


 必死に声を掛けるが少年にはなんの反応もなく、目が半開きになりながらぼーっとしている。


「こ、これはーー」


 


 


 




 


 


 


 


 


 




 


 


 


 











 


 


 


 

 


 


 

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