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オレの(空想!?)異世界転生日記!!  作者: 西住SDXDXDXDX
第二章 『ポンコツ勇者とへっぽこ魔王、死す。そして異世界(現代)へ降り立つ!』〜レッツ、スカイダイビング!!〜
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第十五話

「ーーぁぁぁぁぁあああぎゃああああああ!」


 とある世界で、雲よりも上の遥か上空で叫び声を響かせている者がいたーー。


「おい魔王、呑気に寝ているんじゃない!」


 隣で寝ている魔王の右頬にカザミは拳を一発入れる。


「ん? もう着いたのぎゃああああああああ!」


 夜空を重力に従いものすごい勢いで突き進んでゆくカザミと魔王。先程は夕方だったはずだが夜になっているのは時間が進んだのではない。現在が夜の時間帯の世界へと転生を果たしたのだ。


「「ぎぁああああああばばばびびばー!」」


 カザミと魔王はすさまじい速度で雲を貫いた。


「転生したばっかなのに早速死んじゃううううううううう!」


 凄まじい速度の落下により空気が暴れるように口の中から皮膚をど突いてくる。さらに半分は恐怖、もう半分は風による目の渇きにより次から次へと涙が噴水のように出てきて止まらないカザミの目は半分白目を向いて、正に逝き顔と言えるだろう。こういうAVがあるとするなら、タイトル名は『空中とS◯X〜今にも潮◯きだしそうだ〜』だ。そして、転生の反動でカザミは装備を消滅させられている。現在纏いしは、一式セットの紫色のブラジャーとおパンツーー、これが消えなかったのは不幸中の幸い中の不幸と言えるだろう。スイカのようなおっぱいは空気でずっと上に持ち上げられている。上下にボインボインなど法則が許さない。一方もう一人の方はと言うとーー。


「わがは逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝逝!」


 ほとんどカザミと同様の状態だが、こちらは完全に白目をむいている。浴衣は無事だ。


「「ーー・・・・・・・・・」」


 カザミと魔王の二人は本当に逝ってしまう。あまりの恐怖により失神してしてしまったのだ。



 数十秒後ーー。



「「・・・・・・・・・」」



 そしてまた数十秒後ーー。



「「・・・・・・・・・」」



 そしてまた数十秒後ーー。



「起きろ、へっぽこ魔王!」


「おい貴様んぎゃ! ーー・・・・・・・・・」


 なんとか意識を取り戻したカザミは隣の白目をむいている幼女の鼻の先端に拳を一発お見舞いすると、ボキョっ! と、なんとも言い難い生々しい音を響かせる。すると魔王の鼻はめり込んで、顔面にクレーターができる。カザミの拳は魔王を覚醒させるどころか、意識をさらに深い闇の中へと叩き落としてしまう。カザミは魔王が何か言おうとしていたように見え、「(あれ? もしかして起きてた? ちょうど起きてた?)」と、心の中で唱えるが、ただの気のせいだという結論に到達する。


「く、このクソガキはこんな状況にも関わらず呑気なものだな! まあいい、最後に地面と一体化できればこのクソザコ魔王も本望だろう」


 と言い残し、カザミは魔王を見捨てることにする。


「しかしこの状況、どうしたものか。(翼が生える魔法とか使えれば・・・)」


 カザミは数秒の間、頭の中で思考を巡らせる。そして一つの結論を導き出す、・・・がそれはカザミにとっても実に不本意なことだった。再び魔王に拳をプレゼントしようとしたところで思い留まる。そんなことをすれば現在よりもさらに深い闇へと誘いかねない。カザミは瞼を力強く締めてブルブルっと瞼を震わせ、目を力強く覚醒させると。


「まっっっっおおおおおおおう!」


 カザミが魔王の肩を両手で全力で揺さぶると、魔王は先程の顔面にパンチを食らった時に生じて出た鼻血を四方に撒き散らす。


「・・・ーーはっ! ーーって、うお!?」


 魔王は目を覚ますと、目をギラッギラに輝かせたカザミがいた。


「わ、我輩はまた眠っておったのか。・・・って鼻血が出ておるではないか! そういえば貴様に殴られる夢を見たような気がしたのじゃが、ーー貴様、まじでやりよったな?」


「絶対にやってないよ」


 落ち着いてはいるが内心は凍えるように冷たい殺気を感じさせる魔王の問いにカザミは真顔で首を左右に振る。


「そうか、信じよう。では我輩は魔法で翼を作ってこの場を離れさせてもらう」


「殴ってごめんなさい魔王様! 殴ってごめんなさい魔王様! 殴ってごめんなさい魔王様! 魔法が使えない私めをお助けしてください!」


 必死で謝るカザミに魔王はニヤッと不敵な笑みを浮かべると。


「ははは! バカめ、翼を生やす魔法など習得しとらんわ」


「ははは! さすがへっぽこ魔王、なんでもいいからさっさとこの状況を打開しろ! そして、さっさと私を助けろ!」


「・・・貴様は本当に勇者の風上にも置けぬ性格をしとるのう」


「つべこべ言わずになんとかしろや!」


 散々に野次を飛ばされた魔王は気がかりでもあるのか腕を組んでしばしの間何かを考え込む様子をみせる。


「先程から感じておったことなのじゃが、この世界の魔力は薄過ぎる」


「で?」


「・・・(勇者というのはこういう性格(もの)なのじゃろうか)結論から言うとじゃな、今のところ魔法を発動できん」


「今のところ? ではどうすれば発動できるんだ?」


 魔法を発動できないと言った魔王にカザミは問いかける。すると魔王は右人差し指で下を指す。


「下の方から、恐らく地上になるじゃろうが、あんまり濃くはないが魔力を感じる」


「ーーなるほど、地上に近づけば近づくほど魔力を得られるのか。そこまで行けばなんとかなると?」


「そういうことじゃ。正確に言えばなんとかなる可能性はある、じゃな」


「・・・どういう策なんだ?」


 魔王は一度沈黙し、風の音だけが二人の周りを駆け巡る。そして、沈黙を破った魔王は随分と癪そうな顔をして答える。


「ある程度のところまで落ちて、そこで一気に魔力を吸収する。が、それでも魔法を発動するには全然足りん」


「な、じゃあ一体どうやって・・・?」


「・・・癪じゃが、貴様と我輩が手を握り合う。そして、その手に魔力を一点集中させ、地に着くぎりぎりのところで握り合った魔力の籠った手を貴様のパンチの力で思いっきり地上に放つーー、要は落下の衝撃を和らげるというものじゃ」


 カザミは「ふむふむ」と腕を組んで頷くと。


「わかった、やろう!」


「!? ・・・き、貴様はプライドというものはないのか? 魔王と勇者が手を取り合い協力し合うなど前代未聞じゃ! ・・・知らんけど」


「だがこうするしか助かる道はないのだろう。なら、今はしのごの言わずその可能性に賭けようじゃないか」


「・・・ふん、貴様もたまには良いことを言うではないか」


 カザミは魔王が心無しか、うっすらと笑みを滲ませたように見えた。それに共鳴するかの如くカザミも心の中で「(ふっ)」と唱え、ほんのりと一瞬の間のみ微笑む。が、そうこうしている内に地上の様子が見えてくる。


「おい魔王、時間はあまり残されてはいないようだ」


「わかっておるわ」


「ここは・・・地球ーー? 初めて見た場所なのにここがどこかわかる」


「ふむぅ、地上がきらきらと輝いておる。道路の蛍光灯やビルの中の電気じゃ・・・、なんとも我輩たちがいた世界とはまるで違うな・・・、それにしてもでかい建物が多いのう」


 二人はしばらくの間無言で地上の光景を見つめる。


「「・・・・・・・・・」」


 地上の様子が着実に鮮明になって見えてくる。だが、二人には不思議と恐れや緊張感は無くリラックスしている。そして、カザミと魔王は『スッ』とお互いに手を出し合い、一瞬の賭けに備える。魔王は左手を、カザミは右手を差し出して貝殻繋ぎをする。


 ぎゅう。


「いたいいたいいたいいたい逝たい!」


 魔王の左手に激痛が走る。


「き、貴様、もう少し力を緩めんかい!」


「いやいや、お前がひ弱なだけだろ」



 ーーそして数分後。



「ぜぇ、ぜぇ。そ、そろそろだぞ」


「わ、わかっておる」


 言い合いをしている内にもう地上は目前だ。二人は地上に対して垂直の体勢を取る。


「・・・・・・ふぅ」


 魔王は肩の力を抜きリラックスして魔力を吸収しに掛かると、魔王から半径十m程の虚空が陽炎のように歪み始めて一気に魔王に収束し、カザミと握っている手にはたまた収束し、握られた手が『コォォー』という音を放ちながら夜に溶け込むような青色の輝きを放ちだす。地上はもう目と鼻の先だ。


「よし、準備は整ったぞ」


「ああ、後は私に任せろ」


「「・・・・・・」」


 二人は沈黙して、ごぉぉっという風の音だけとすれ違う。


 そしてーー、ついに運命が決まる。


「今だ!」


「はぁぁぁああああ!」


 二人の落下地点は公園だった。そして、その公園は無数の大岩に囲まれており、その公園の真ん中には他と比べて一際大きな岩が置かれてある。その岩に、カザミがありったけの魔力が蓄積され威力が何倍にも増した魔王と手を繋いでいるその拳を解き放つ!


 ドガアアアアン!


 岩が爆散して四方へ破片が飛んでゆき、公園一帯が土煙に隠れていく。


 ・・・・・・・・・。

 土煙が数十秒ほど掛けて晴れてゆく。そして、そこの地面に二つの倒れている影が出現する。


「はぁ・・・はぁ・・・、なんとか成功したようだな」


 なんとか関門を突破した地面に突っ伏している魔王とカザミ。


「よっっこらせー」


 一声上げながらその場で立ち上がったカザミは辺りを見渡す。


「どうやらここは公園のようだな。おい、魔王。いつまで突っ伏している。さっさと探索するぞ」


「・・・・・・」


 カザミの呼びかけに答えることはなく、魔王はずっと左腕をピクピクと震わせている。


「う、腕がぁ」


 カザミの凄まじい勢いのパンチにより、魔王は左腕の関節を脱臼してしまったのであった。


 







 


 








 


 


 




 


 

次回より第三章!

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