夏休みの日常① 『ミホ流錬金術』
「そういやミホ、お前なんかが錬金術なんてイカした技、どこで覚えたんだよ?」
夏休み初日──、オレは異世界からやってきたというミホと共に、もう一人の異世界からの来訪者、オーガとの死闘を潜り抜け、夕食を取っていた。
「"なんか"って何よ! 私の類まれなる素質と努力の結晶よ」
「結晶って焦げパンのことか?」
「むきー! ポーションだって作れるもん!」
「でも、珍しいよな。錬成って……あれだろ? 『等価交換』? っていうのか? その物質に釣り合ったものに変えるとかなんとか。でもお前は魔力だけでいいんだろ?」
「そうよ! なんだ、分かってるじゃん。ポーションは得意ジャンルだから余裕だけど、焦げパンしか錬成できなかったのは正にそこなんだよ」
ミホは油性ペンを手に取り、床に魔法陣のようなものを書き始める。
すると食卓のフォークを手に取り魔法陣の中央に置いた。
「えい!」
ミホは両手で床にパン! と鳴らした。
ベチベチベチベチドヒューン──。
魔法陣から小さな電気が迸り、煙が舞う。
煙が徐々に消えていき、魔法陣の中から現れたのは、スーパーでよく見るアレだった。
「え、アルミホイルに変わってる!」
「どう? ちったぁ見直した? このど三流ヒキニートが!」
「く、くそ……、普通にかっこいいぜ……」
「感服したなら今すぐ包み焼きハンバーグを作りなさい」
オレはスタスタとキッチンに向かった。