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【10/7完結巻発売】誤解された『身代わりの魔女』は、国王から最初の恋と最後の恋を捧げられる  作者: 十夜
国王フェリクスの後悔と恋慕【SIDE国王フェリクス】

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40 後悔 1

「ルピア、ブランケットから腕が出ているが、寒くはないか?」


寝台に横たわっていた妻が、ブランケットから腕を突き出したのを見て、心配になって声を掛ける。


もちろん返事があるはずもないので、私は椅子から立ち上がると、彼女の状態を確認するため寝台に近付いて行った。



―――彼女が私の身代わりとなり、昏睡状態に陥った日から、2か月が経過していた。

倒れた直後の彼女は酷い状態で、耐えられないほどの苦しみに四六時中襲われていたが、最近では少しずつ穏やかに眠れる時間が増えてきた。


とは言っても、未だ安心できる状態には程遠く、彼女から目を離すことはできなかった。

そのため、私は彼女の寝室に小さな机を持ち込むと、寝台の近くに備え付けた。


そして、定期的に彼女の状態を確認しながら書類仕事をするのが、私の日常となっていた。


今日も普段通りに急ぎの書類を確認していたところ、目の端で彼女が動くのが見えたため、心配になって声を掛けたのだ。


季節は冬に差し掛かろうとしている時期で、腕を剥き出しにしては寒いだろうと彼女に触れると、予想に反してその腕は熱っぽかった。

つい先ほど確認した時は平熱だったため安心していたが、どうやら発熱してきたようだ。


ルピアの熱は簡単に、上がったり下がったりする。

そのため、これはよくない兆候だと心配しながら、彼女の額に浮かんだ汗を拭っていると、その間にも彼女の熱はさらに上昇してきた。


はあはあと彼女の吐く息が荒くなってきたことで、濃い毒が彼女の体内を回り始めたことを確信し、またもや苦しみの時間が彼女を襲うのかと考えて顔が歪む。

部屋の隅に控えていたミレナも、白い布を手にすると、慌てた様子で近付いてきた。


果たして悪い予想通り、ルピアは突然、呼吸困難に陥ったようで、目を瞑ったまま眉を寄せると、苦し気にシーツを握りしめた。

私はすかさず寝台に腰を下ろすと、彼女の上半身を抱きかかえたが、腕の中の彼女の顔色はみるみる青ざめていった。


「ルピア、ルピア」

声を掛けても彼女に聞こえるはずもなく、ルピアは上半身を折り曲げると、ミレナが差し出した布の上に吐血した。

その色はどす黒く、彼女の体の中に酷く悪いものが溜まっていることを示している。


「……っ、…………」


声も出せずに苦しんでいるルピアの背中を、私は必死でさすった。

「ああ、苦しいね、苦しいだろう。すまない。私より何倍も細くて、弱々しい君にばかり負担をかけて」


腕の中の彼女はかすかに震えていて、その体は燃えるように熱かった。

息ができずに苦しいのだろう。閉じられた彼女の瞳から、涙がぽろぽろと零れ落ちる。


「……ああ、ルピア、ルピア。すまない、すまない。苦しいね……」

何の役にも立たず、同じ言葉を繰り返すだけの私の腕の中で、強張ってガチガチになっていた彼女の体からふっと力が抜けた。

同時に、彼女の体温がどんどん下がっていき、がくがくと寒さに震え始めた姿を見て、慌ててブランケットを体に巻き付ける。


寝台の上に横たえると、彼女は私に背中を向け、まるで胎児のように体を丸めた。

同じタイミングで、寝台の上で大人しくしていた彼女の守護聖獣が、大きな尻尾をふわりと広げ、まるで温かな寝具でもあるかのように丸まった彼女の上に乗せる。


その感触が心地いいのか、ルピアは安心したように息を吐くと、そのまますーすーと穏やかな寝息を立て始めた。

私はミレナから濡れた布を受け取ると、未だ汗で湿っている彼女の額を拭いた。


日に何度も訪れる苦しみの時間が、やっと1回終わったと考えながら。


そして、あと何回、彼女はこの苦しみに耐えなければいけないのだろうと考え、唇を噛みしめた。



―――ルピアが倒れた直後は、全てが混乱していた。


そもそも私が運び込まれた部屋には、王宮中にいた高位貴族や上級文官たちが集められていたが、とても今後の状況を話し合える状態ではなかった。


なぜなら王である私が、猛毒を持つ蜘蛛に噛まれたからだ。

その場にいる全員が国王の死を確信し、混乱のるつぼと化していた。


そんな中、最期の言葉を聞き取りにきた王妃が、王の毒を吸い出し―――その場にいた多くの者はそう信じた―――死にかけていた王が立ち上がったのだ。

ルピアを抱えて退室する私を、彼らはまるで、死体を見るような目つきで見つめていた。


しかし、その場にいた皆と同じように、実際は私自身も混乱していた。


ミレナのつぶやきが耳に入った途端、ルピアが告白してくれた彼女の秘密を思い出し、彼女に命を救われたことだけは理解していたが、真には『身代わり』の意味を理解していなかったからだ。

―――その残酷さも。


私は意識を失った彼女を抱えたまま、長い廊下を進んだ。

それから、彼女の寝室に足を踏み入れると、寝台にゆっくりと彼女を下ろした。


移動してくるわずかの間にも、彼女の状態は悪くなっていた。

倒れた直後から熱かった体はさらに熱を持ち、時々呼吸が途切れるとともに、びくりと痙攣するかのように体が跳ねる。


見下ろした彼女の全身は、深紫とも黒とも言える色に変色していて、尋常な状態でないことは一目で分かった。

すぐ後ろに付いてきた、王宮付き侍医を振り返る。


「妃を見てくれ!」


しかし、彼がルピアに触れるより早く、彼女は苦し気に息を詰めた後、真っ黒な血をごぽりと吐いた。


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書店特典SSの中から、特に読んでいただきたいものを厳選して7本掲載しました。


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ルピアとフェリクスの甘々な日々、それから身代わりになり、さらに……
のパートがめちゃくちゃドラマティックに描かれています。
ぐぐっと物語に入り込めますので、ぜひ読んでみてください。


どちらも素晴らしい出来栄えになっています!
ぜひ2冊まとめてお楽しみください!! どうぞよろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
― 新着の感想 ―
[良い点] ルピアの身代わりの苦しみの描写はかわいそうではありますが、身代わりの魔女が身代わりになるということがどれだけ大変で、相手への愛情無しでは出来ないことだということがわかる部分だと思います。 …
[良い点] おはようございます。 何度も何度も読み返しています。 身代わりになると言うことは、残酷ですよね。 ルピアは死ぬことはないと言ってましたが、 死ぬはずの重い怪我や病気なんですから、その身体に…
[一言] 戦争の怪我の身代わりも懐妊のことも、全部の誤解が解けて、ルピアが目覚め赤ちゃんが生まれる日が早くて来ますように!!
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