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【10/7完結巻発売】誤解された『身代わりの魔女』は、国王から最初の恋と最後の恋を捧げられる  作者: 十夜
国王フェリクスの後悔と恋慕【SIDE国王フェリクス】

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37 真実 2

―――私はどれだけ、ルピアのことを理解していたのだろう?


恐らく、全くと言っていいほど理解していなかった。

全てが思い込みによる誤解であり、だからこそ、私は今、その報いを受けている。


ルピアとの思い出を見つめ直す度に、彼女が与えてくれた思いやりと愛情に気付かされ、胸が締め付けられるのだ。


彼女は恥ずかしがり屋で、言葉が足りないタイプだと理解していたはずなのに、彼女が口にしなかった多くのことを、なかったものとして扱ってしまった……目に見えていた、数々のヒントに気付きもせずに。


……ああ、私はもっと多くのことを、彼女に尋ねるべきだった。

彼女の言葉をしっかりと聞いて、彼女が見つめている世界を理解すべきだった。

そうすれば、これほどまでに彼女のことを見誤ることもなかっただろうに……。



彼女との関係におけるターニングポイントは、隣国との戦争だった。

その時までの私は、ルピアにゆるやかな好意を抱いていた。


彼女は優しくて思いやりがあり、自分のことよりも相手のことを優先していたから。

真面目で一所懸命で、どんな小さな事柄にも熱心に取り組んでいたから。

いつだって、「フェリクス様、フェリクス様」と私を気に掛けてくれたから。


―――そんな彼女に見つめられることが嬉しくて、彼女に名前を呼ばれることが嬉しくて、……あの時既に、私は妃に特別な思いを抱いていたのだろう。


だからこそ、開戦が決まった時、彼女を我が国に残すことができず、母国へ戻るようにと頼んだのだ。

―――責任感の強い彼女がこの国に残りたがっていたことも、王妃のあるべき姿としてこの国に留まらせるべきであることも分かっていたが、自分の要望を優先させたのだ。


なぜならルピアが危険な場所にいると考えるだけで心が休まらなかったし、彼女が私を待っていると考えるだけで、何としても彼女のもとに戻らなければならないとの気持ちになれたからだ。


そして、その気持ちは戦争中も変わらなかった。


それどころか、彼女と離れたことで、私にとって彼女がいかに大切な存在かを認識させられた。

ふとした時に思い出すのは、いつだってルピアのことだったからだ。


―――週に1度、ルピアは戦場の私に手紙をくれた。

季節の移り変わりを教えてくれ、彼女が元気だと知らせてくれ、私のことを心配してくれる、読むと心が温かくなる手紙を。


己の命と兵の命を守ることに精一杯で、余裕も娯楽もない毎日の中、彼女からの手紙を唯一の宝物のように感じていた。

そのため、届くとすぐに皆から離れた場所に座り、一人で読むのが習慣となっていた。


―――あの日、戦場で敵兵から奇襲された時も、私は一人離れた場所に座り、彼女からの手紙を読んでいた。


油断していたところを襲われ、驚く間もなく、胸を刺し貫かれる痛みと熱さを覚える。

しかし、ここで死ぬわけにはいかないと、無我夢中で足を動かした。


そして、わずかな可能性にかけて崖から飛び降りた。


次に目が覚めた時には、テオを含めた1ダースほどの兵に囲まれていた。

驚くべきことに、痛みも苦しみもなく、確認すると跡形もなく傷が消えていた。


命にかかわるほどの大きな傷であったはずだ。

何事が起ったのかと驚愕する私に、テオは『虹の女神が現れて、王の傷を治した』と説明した。


そのようなことがあり得るのかと半信半疑だったものの、傷が消えた理由を他に説明することができず、テオの証言を受け入れた。


傷一つない姿で戻った私を見て、兵たちは『虹の女神のご加護だ!』『王が大義を果たすことを、女神はお望みになっておられる!!』と高揚し、その勢いは戦局に大きく影響した。


一方、ビアージョ騎士団総長は私を見て、地面に平伏した。

「尊き御身をお守りできず、申し訳ありませんでした。心よりお詫び申し上げます」


彼の忠誠心は理解していたので、片手を上げて制する。

「お前のせいではない。元々、私が一人離れた場所にいたのが原因だ。そのうえ、畏れ多くも女神にお助けいただいたのだから、問題になるはずもない。……ただ、私は意識を失っていたので、実際に女神にご助力いただいたかどうかは不明だがな」


ビアージョは重々しい様子で口を開いた。

「陛下、恐れながら、全ての物事には対価が必要だと、私は考えています。たとえ奇跡であったとしてもです。女神が陛下に常ならざる恩寵をお与えくださったのであれば、それ以上のものを女神にお返ししなければなりません」


「それでは、この戦いから生きて戻り、女神が守る我が国の繁栄に努めよう。そして、女神の御名を、我が国の隅々まで行き渡らせるのだ」

私の言葉を聞いたビアージョは、深く頭を下げた。


―――その後、女神の加護を得たと信じた兵たちに支えられ、我が国は勝利した。


高揚する兵たちとともに帰国の途についた私は、しかし、一つだけ気掛かりなことがあった。

戦の途中から、ルピアの手紙が届かなくなったことだ。


体調不良を心配したが、代わりにルピアの無事を知らせる報告がディアブロ王国の名で届き、その懸念は払拭される。

残念なことだが、素直に考えれば、ルピアの手紙を書く気が失せたのだろう。


忙しさを理由に、ほとんど返事も出さない私が相手では仕方がないことだと、その時の私は考えていた。


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どちらも素晴らしい出来栄えになっています!
ぜひ2冊まとめてお楽しみください!! どうぞよろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
― 新着の感想 ―
自軍の兵を1ダースほどの兵とまとめるのもすげえ。。人間の単位でも使うのか。1ダース
[気になる点] もう少し王がルピアの能力について、目の当たりにして、どう思ったのか、どう後悔しているのか、今までの気持ちとの変化を知りたいです。
[良い点] 先生は毎日更新してくれてるのに続きが楽しみすぎて 皆の感想を読みながら、更新待ちを耐えてます [気になる点] ギルベルトが「身代わり」と聞いて息を呑んだのは、手紙を隠蔽してたからですかね …
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