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【10/7完結巻発売】誤解された『身代わりの魔女』は、国王から最初の恋と最後の恋を捧げられる  作者: 十夜
国王は魔女に最初の恋と最後の恋を捧げる

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130 ディアブロ王国への帰還 1

『白い髪の王妃は、国民にどう思われているのかしら?』

その答えを確かめたいとは思ったものの、残念ながらその機会はすぐに訪れなかった。


ディアブロ王国を訪問する日程が先に来てしまったからだ。

より正確に言うと、母国を訪問するまで数日間あったのだけど、来客が多くて市井に顔を出す暇がなかった。

いつものフェリクス様に加えて、クリスタとハーラルトが毎日、私の部屋に来てくれたからだ。


さらには、これまで自ら近付いてくることがなかったギルベルト宰相とビアージョ総長も、私に接触してきた。

何か重大な行事でもあるのかしらと訝しく思っていると、ギルベルト宰相は約7週間後のフェリクス様の誕生日に併せて、私の誕生日を盛大に祝いたいと提案してきた。


実のところ、私の誕生日は昨日だった。

そのため、フェリクス様から事前に、大々的なイベントを開催するのはどうかと提案されていたけれど、体調がどのくらい回復するか分からなかったし、この国に残ると心を定めきれていなかったので、今回は見合わせるようお願いした。


そうは言っても、王妃の誕生日ということは市井に知れ渡っていたようで、王都にあるすべての花屋から誕生花がなくなり、街中や街道、各家庭に飾られたらしい。

それから、王宮中のあらゆる場所にも私の誕生花が飾られていたので、昨日はそれらの花を目にするたびに胸の中がほっこりと温かくなったのだ。


「王妃陛下のご要望は何よりも優先されます。ご家族でゆっくり誕生日を過ごされたいというご希望をいただきましたので、一切イベントを行いませんでした。ですが、国民たちの間にはそのことを不満に思い、王妃陛下をお祝いしたいという希望者が続出しておりまして……」

「どういうことかしら?」


不思議に思って聞き返すと、ギルベルト宰相は言いにくそうな様子を見せた。

「その、ここのところ何年も、王妃陛下の生誕祭を行っておりましたので、なぜ体調が回復された今年に限ってイベントを取りやめたのだ、と苦情が出ておりまして……」


「毎年、私の誕生日にはイベントを開催していたの?」

初耳だったので、びっくりして聞き返す。


すると、ギルベルト宰相は居心地が悪そうに体を動かすと、目を逸らしながら答えた。

「王妃陛下はお眠りになっていて、ご意思を確認することができませんでしたので、私どもの判断で勝手にやらせていただきました。フェリクス王の直轄領にはぶどうの産地がありますので、そこで作られたワインを無料で提供したり、多くの吟遊詩人や踊り子を王都に招待したりして……」


「まあ、それは国民がとっても喜びそうなイベントね」

そんな楽しいイベントが取りやめになったのだとしたら、確かに多くの国民ががっかりするだろう。


けれど、これから私は母国を訪問する予定になっている。

往復の期間も含めると、約5週間もの間この国を不在にするから、スターリング王国に戻ってくるのはフェリクス様の誕生日の直前だ。

さすがに準備をする時間が不足しているからフェリクス様の誕生祝いだけでいいのじゃないかしらと、婉曲に断ったところ、全てお任せくださいと宰相が胸を叩く。


無理じゃないかしらと思ったけれど、宰相が既に計画書は完成していると言い出し、熱く語られ出したため、彼の熱意に押し切られてしまった。

何だか大仰なことになりそうだけど、大丈夫かしら。


そう心配になっていると、今度はビアージョ総長が騎士たちを引き連れてきた。

「ルピア妃、王のご命令でこの度、王妃陛下専属の近衛騎士団を立ち上げました。この者たちが王妃専属になりますので、どうかお見知りおきください」


「えっ、私専用の近衛騎士団?」

あまりにスケールの大きい話に目を丸くしていると、ビアージョ総長は当然だとばかりに頷き、地面に片膝をついて臣下の礼を執った。


「我が国は国王制を採っていますので、国王と王妃がともに危険な目に遭った場合、国王の助けに入ろうとする騎士の数が多くなる可能性があります」


それは当然のことだわ、と納得して頷く。

フェリクス様はなくてはならない方だから、騎士たちが一番に救おうとするのは当然のことだ。


「しかし、それでは王妃陛下の守りが手薄になる可能性があります。そのリスクを回避するために立ち上げた王妃専属の近衛騎士団、『白雪近衛騎士団』です」


目の前にいる騎士たちが着用している騎士服は白色で、これまで目にしていた藍色の騎士服とは色もデザインも異なっていた。


新たに騎士服を新調したのであれば、既に決定されている事柄のはずで、今さら何か言ったとしても手遅れだ。

そもそも王族警護計画は様々なことを複合的に考えて立案されるものだから、ここまで形になったものを否定することは難しいだろう。


そう考え、近衛騎士を受け入れるような言葉を発する。

「ええと、その……そうなのね」


すると、ビアージョ総長はほっとしたような表情を浮かべると、素早く立ち上がって一礼した。

「これ以上ここに留まって、王妃陛下のお目汚しになっていけませんので、私はこれで失礼します」

総長はそれだけ言うと、私の護衛騎士であるバルナバを含む数名の騎士を残してそそくさと去っていった。


ビアージョ総長のことを邪魔だとはこれっぽっちも考えていなかったけれど、総長の一歩は大きく、さかさかと去っていってしまったので、呼び止める暇もなかった。


ぽかんと総長の後ろ姿を眺めていると、バルナバが生真面目な表情で頭を下げる。

「王妃陛下、このたび、私が近衛騎士団長を拝命仕りました。我々近衛騎士が一丸となって、王妃陛下のことをお守りしますので、どうぞよろしくお願いします」

バルナバに続いて、彼の後ろに控えていた騎士たちも頭を下げた。


時が経つのは早いもので、私が10年間眠っている間に、バルナバは30代半ばになっていた。

そして、今日は近衛騎士団長という名誉ある立場を紹介されたのだから、彼はこの10年間、ものすごく頑張ったのだろう。

「バルナバ、あなたが私を守ってくれると思うととっても心強いわ。皆様もよろしくお願いするわね」


私の言葉を聞いた騎士たちは背筋を伸ばすと、一斉に騎士の礼を執ったのだった。


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