ゆっくりと休ませてください
どれくらい時間がたったのだろうか、今はまだ何も考えたくない。
俺は寝足りず近くにあった暖かいものに抱き着いた。
…………?
暖かい?
ガバッっと起き上がろうとすると、腕を捕まれベッドに逆戻り。
目の前には眩しいくらいの金色の頭が!
っ〜〜〜〜〜!?
驚き過ぎて言葉にならない
すると目の前の固まりがゴソゴソと動き出し、『んー』っと声を発し顔を近付けてくると
「おはよう、麻鈔。
よく眠れた?」
新婚の様な言葉を発し、頬に口づけしてくる。
やっと正常に働きだした俺の脳は危険信号を身体全体に送ったため、俺は咄嗟に目の前のものを力いっぱい突き飛ばした。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「痛いなぁ…昨日から踏んだり蹴ったりだよ。
僕の綺麗な顔に傷跡が残ったらどうしてくれるわけ!?あっ、その時は責任取ってお嫁にきてね!!」
こっちを横目で見ながら拗ねたように唇を尖らせ、これみよがしに左頬を摩っている。
今、先輩は二人分のコーヒーを入れるためキッチンに立っている。
その頬には貼り直したのだろうか肌色の湿布が貼ってある。
「いきなりベッドから突き落としたのは悪かったけど、元はと言えば先輩が勝手に入ってたんでしょ。
その時点で文句を言われる筋合いは無い。誰が嫁になんかいくか。
そもそもどうやったら部屋に入れたんだ?
ちゃんと鍵はかけたのに」
入れて貰ったコーヒーに礼を言いつつ冷たく言い放つ。
俺の部屋で寝なければならない理由は皆無だ。
俺はコーヒーに砂糖を一つだけ入れて口をつける。
…美味しい。
………ってか今更だけど、この人は何言ってんの?
嫁?有り得なくない?
俺男なんですけど、あぁ先生言ってたもんなぁ…近場漁ってるって。
だからって、いきなりですか?
転入生だからからかわれてると思ってスルーしたけど、もっと先生の話聞いとけばよかった。
例えば、しつこい変態のかわし方とか?
別にそういう趣味の人に偏見はないけど、巻き込またくはないな。
自分達で勝手にやってくださいってかんじ。
「そこは愛の力だよ!
って言いたいところだけど、じゃじゃーん☆鍵〜!
まだ渡してないのに部屋に入っちゃうんだもん、中に入ったら寝ちゃってるし。
それを見たら僕も眠たくなって寝ちゃった」
あはっ☆っとハニカム勢いで首を傾げ言ってくる。
しかし、俺は他のことに興味が移っていた。
それこそ『愛の力』なんて言葉は耳に届いていない。
何だ、この人!?
砂糖何個入れんだよ!俺が見ただけで六個、今七個目投入…。
見ただけで糖尿になりそうだ。
はぁ!?そこに牛乳入れんの!?
なんかカップが俺のよりでかいなぁ、と思ってたらそのため?
それじゃコーヒーじゃなくて、コーヒー牛乳じゃん!
作らずに買ってこいよ!
俺が人の味覚の神秘について悩んでいると、手の上に鍵を乗せられた。
「それ麻鈔の部屋の鍵ね。
そしてこっちが合鍵〜、これは僕が持っとくから。
かわいい麻鈔にいつでも会えるように。
あ、あとケータイの番号入れておいたから、いつでも連絡してね。
麻鈔のためならすっ飛んで行くから!!」
「馬鹿か、貴様!!それよこせ!
合鍵なんてあってたまるか!プライバシーを侵害すんな!
…あぁもう、何勝手にケータイ弄ってんだよ!
絶対かけてくんなよ!
大人しく朔螺先輩と一緒に生徒会の仕事でもしとけ!!」
先輩の手から鍵を奪いとると『チッ』っと舌打ちをしながらコーヒー牛乳を啜っている。
本気で部屋にはいってくるつもりだったのかよ…。
「そうそう、今日は学校休みだから僕が案内してあげるよ、っていうかするから。強制。
生徒会長命令。
さっさと着替えて行くよー!」
いきなりニッコリ笑ったかと思うと、言うやいなやさっさと自分の部屋に入っていく先輩。
…今日学校休み!?
いや、随分ゆっくりしてるなとは思ったけど。
っていうことは今日一日中先輩と一緒ー!?
ふざけんな!身体がもたねぇよ!!
誰でもいいからヘルプミー!!
キリがいいとこまで、って考えると字数がまちまちになってしまいます。できるだけ読みやすくしたいと頑張っているので、よろしくお願いします。