話の通じない人
無意味に始まった撮影会も終わり…いや、終わらせ
(途中でこれまた何処からかメイド服を取り出したため、包丁を持って応戦したところ大人しくなった)
俺達二人は兎廩先輩が煎れたお茶を手に、テーブルを挟んで向かい合わせに座っている。
散々隣に座るとごねる先輩を説得するのに、これまた数十分かかった。
ちなみに、朔螺先輩は兎廩先輩が追い出していた。俺はあの人の去り際の人を殺せるくらい鋭い視線を一生忘れない。
それにしても美味いよなぁ、このお茶。
やっぱ茶葉が違うのかなぁ?
俺が煎れてもこうはならないし。
んー、美味っ♪
「あ、そうそう。
君は今から僕のものだからね、ハニー。」
突然、思い出したかのように言ってくる兎廩先輩。
途端にお茶の味が無くなったような気がする。
「だーかーらーっ、おまえのじゃねー!俺は俺のものだ!
それにハニーってやめろ!今時古い!!」
まぁ、胡桃さんも親父のことダーリン呼びだけど、そこは目をつぶろう。
「だって自己紹介してくれないんだもんっ。
だから、何て呼べばいいかわからないでしょ?
それに大丈夫!優しくするから。」
「名前は稔傘麻鈔、一年…って、何が大丈夫だ!?全然話が噛み合ってねーじゃねぇか!
そもそも、いきなり…キッ、キスとかしてくる奴がマトモなわけないだろ!!はっ初めてだったんだからな!!」
顔を真っ赤にし息を切らしながら叫ぶ俺に、先輩は本当に嬉しそうに顔を綻ばせる。
その子供みたいな顔に、思わず息が詰まってしまう。
「えっ?本当?よかったー。
初めてじゃないって言われたら、嫉妬で僕その人の家にマシンガン持って突入するところだったよ。そうだ!ついでにセカンドもいっとくー?」
だめだこの人は!!
もうこれ以上同じ空気を吸ってはいけない!
脳がイカレてしまう。
身の危険を感じた俺はバタバタと色々なものを床に落しながらも、迫ってくる先輩をかわし、自分の部屋かはわからないがとりあえず近くの部屋に入り中から鍵をかけた。
あ、あぶねぇ……このままじゃ身がもたん。
バクバク激しく脈打つ心臓を静めようと、胸に手をあて周りを見てみる。
…大丈夫だ、ここは俺の部屋のようだ。
シンプルにベッドと勉強机、クローゼットしかない部屋にバンバンッとダンボールが無造作に置いてある。
後ろのドアの向こうから何かしら叫ぶ声が聞こえるが、防音設備がいいのだろう。微かにしか聞こえない。
俺は途端に疲労を感じてベッドにダイブすると、そのまま着替えもせずに深い眠りについた。
本編に戻ってきました。長らくおまたせしました。短くてすいません。また、担任の先生を自己紹介に載せるのを忘れました。ごめんなさい。めんどくさいので省略します。