浮き沈みの激しい今日この頃
………
俺はとてつもなく豪華で立派な最上階の部屋の前に立っている。
『生徒会の権力って強いんだよ、学校仕切ってるしね』
『生徒会長も最初は散々ごねてたんだけど』
さっき教えて貰った情報を頭の中で整理してみる。
…そんな権力のある人に頼み込まなきゃいけないなんて、どんな状況だよ!?
そこで諦めていたら、俺はここに来なくてもよかったかもしれないのに…。
うちの母親は学園の弱みでも握ってたのか?
…あの人ならやりそうだ。
顔を上げてみると
『兎廩』『稔傘』
と、ご丁寧に標札までかかっている。
それにしても相手の人は何ていう名前なんだ?
とりん? とくら?……とくら?
『とくら様ぁ〜!』
サーっと俺の顔に青い縦線が入る。
…いやっそんなことはない。
あってはならない。
この広い学園の中でアイツの同室者に俺が選ばれる必要性が全く感じられない!
…落ち着け俺、ドアを開けてみればわかることではないか。
でも、もし開けてみてアイツが居たら?俺の学園生活は終わったに等しいぞ!
それなら、このままトンズラするか?
思えば一人息子が心配なら、一緒に旅行しようという考えが浮かんでもいいんじゃないか!?
あぁーそうだ、それがあった!!
クソーお土産なんかいらな…
ガチャッ
ビクッとして俺が後ろを振り返ると
「こんなところで一人でぶつぶつと何言ってるんだ?」
中からいかにも優等生です!
というような黒髪メガネの整った顔立ちのお方が出てこられた。
超マトモだ!!
嬉しくて涙が出てきた。
そうだよね、生徒会長だもん。
そんな変な奴がやってる訳無いじゃん!
あぁ、神様はまだ俺を見捨ててはいなかった。
明日からは毎日お祈りをします、その前にロザリオ付けます!
頭の中ではどれがいいかとあれこれ試着している。
俺は感激して
「今日からお世話になります、稔傘麻鈔です!
よろしくお願いします!!」
天使がいたらきっとこんなだろうなぁと思わせるほどの笑みを浮かべた。
「あぁ、よろしく
俺は副生徒会長をしている朔螺 埒 (サクラ ラツ)」
彼は一瞬キョトンとし、それから意味深な笑みを浮かべて俺に手を差し延べてきた。
だけどそんなことには気づかずに、尻尾があったらパタパタと振っているだろう懐きっぷりで握手をする俺。
しかし、そこで重要なことを思い出す。
…ん?……副生徒会長?
…あれ?
俺の同室者って会長だったよな?
副じゃないよな?
「えーっと、俺の同室者って…?」
さっきまでの笑顔は何処へやら、ピクピクと口の端を引き攣らせながら俺は尋ねる。
頼む!!俺だよとニッコリ笑って言ってくれー!!(泣)
「あぁ、兎廩でしょ?
アイツ何処うろついてるんだか、自分で部屋に呼んでおいて。
今度生徒会室に縛り付けて仕事させてやる」
あのー、ちょっと朔螺先輩?黒いオーラが漂っていますよ?
わぁー…知りたくなかったなぁ、先輩の新たな一面。
ってそれどころではない、やっぱり先輩は同室者ではなかった。
朔螺先輩のどす黒いオーラに負けないくらい俺が負のオーラを出していると、場違いな底抜けに明るい声が廊下の向こう側から響いてくる。
よっしゃー、やるぜー!