宇宙の方程式
いくら皐月祭だと浮かれていても、俺達は学生なわけで……
学生だということは、『学ぶ』、『生徒』なわけで……
やってきました中間テスト!!
………え?内容ぶっ飛びすぎだって?しょうがないじゃん。
俺にとってはここに来てからずっと楽しんで話すようなことはないんだよ。
まぁ、ちょっとだけ話すとしたら軽ーいイジメにあったこと数十回。呪いの手紙とか、ノートに落書きされたとか、体操服が消えたとか。
理事長室に行く途中に峻岑先輩が牽制してくれたおかげでこの程度らしい。
実際、親衛隊からの呼び出しは1度もない。
後、海睹も俺も結局言いくるめられてカップル仮装コンテストに出ることになった。……ありえない。だって峻岑先輩が兎廩先輩になんか耳打ちしてこっちをニヤニヤ見てたんだよ!?絶対いいことじゃないでしょこれ!
いつ現実逃避をしようか目下悩み中だ。
そんなことよりも今は試験のことを考えなくては!
いろんな意味で勉強してなかった(する余裕がなかった)から、苦手な数学がピンチ!!他の教科は授業だけでなんとかなるんだけど、これだけは聞きに行かないと赤点覚悟状態になる。
「だから……、質問に行かせろー!!」
「あはは、麻鈔ちゃん諦めたほうがいいよ。埒ちゃんが許すわけないじゃん。それに質問なら規衣ちゃんにしたら?意外と規衣ちゃん頭いいよ?」
今俺がいるのは生徒会室。後ろからは兎廩先輩がのしかかってきていて逃げられない。
「わかった、僕が教えよう!」
そんな決心いらないのに立ち上がって俺の手を引いていく。
連れていかれたのは休憩室。ベッドとテーブルさらには冷蔵庫まで備えられている。
「はい座って、どこがわからないの?」
椅子に座らされると諦めるしかないと悟り、渋々ノートを開く。一様先輩なんだけど……なんだけど!なんだか屈辱的。
指を指すとフムフムと先輩は頷き、
「あぁ、これは簡単。まずこの文字達をじーっと見つめるでしょ、すると赤くぽぁ〜と光るからそこで目を閉じる。ゆっくり3秒数えて目を開けると……ほら、ちゃんと整列してならんでるでしょ?これが答えだよ!」
「どこらへんが『ほら』だよ!?意味わからん。で……結局答えは?」
そんな我流が通用するはずがない。いや、してはいけない。目を閉じればいいだけなんてどこのインチキ商売だ。
この人はやっぱりネジが3本くらい足りない。全国の高校生に土下座してもなりないくらいだ。
「だから、3/28だよ。頑張って28が3を棒1本で支えてるんだから褒めてあげなきゃ。ねぇ、」
……合って、……る?
俺はとうとう頭がイカれてきたらしい。答えには今聞こえてきた数字が見えるし、そのあとには意味不明な独自論が聞こえてきたし。
「ほら、麻鈔もやってみなよ。」
なんか今、俺にもこれをやれという幻聴が……最近疲れてるなぁ。いっぺん帰って休もう。
出ていこうとしたところをガシッと腕を捕まれる。……なんか多いなこのパターン。
「ああぁ!?せ、先輩!!窓の向こうで逆立ちして頭で玉乗りした天狗が火の輪をくぐろうとしてる!?」
「なにぃぃぃ!?」
先輩が窓から身を乗り出して外を見ているうちにサッと生徒会室を後にする。俺も役者になったものだ。
明日朔螺先輩が恐そうだけど、ここにいたら今すぐ俺の頭が壊れそうだから勘弁だ。
結局先生に聞きに行ったところあっという間に解決し、それよりも天狗がいなかったと拗ねて帰ってきた先輩の相手をするほうに時間がかかった。
………くそっ、河童にしとけばよかった。
「おはよう、麻鈔。」
「あ、絖里だー!おはよー。」
朝偶然食堂で会った絖里と一緒に朝食をとって試験の結果を見に行く。ここではエリート教育をうたうため生徒全員の成績が廊下に張り出される。しかも、各教科何点ってところまで張り出す徹底ぶりだ。
全学年同じところに張り出されるため人が多すぎてなかなか見れない。
「こういうときクラスがAって楽だよな。だいたいの自分の位置がわかるから。」
それって自分頭いいよ発言なんだけど、サラッと普通に言ってしまう絖里に厭味は感じない。昔からこうなんだろうなぁと思う。
「だいたいだなんて厭味な奴だな。さすが、万年首席様は言うことがちがうな。」
「オレは努力してるんです。授業サボってばっかりなのに次席をとり続けてる人に言われるなんて心外。」
おぉーっと、海睹がやって来たと思ったらいきなり修羅場!?ってか2人とも何気に頭いいんだね。
……で、俺は?
「……あっ。」
何やらまだ言い合っていた2人は俺の言葉に振り向き、俺の視線の先をたどる。
「……。」
「おぉー。新時代到来か?」
反応はそれぞれだが、見つめる先はただ一点。
「俺……首席?」
そこには確かに俺の名前が。その隣には絖里の名前が、そのまた隣には海睹の名前が。
「悔しいー、次は負けないからな!!」
「じゃあ、俺も久しぶりにやってみるかなぁー?」
なんか、いらんところに火をつけてしまった感じだ。
サッサと教室に向かおうとしたところ、ありえないくらいの悲鳴(歓声?)が響いた。空気が振動するということをこの時初めて体感した。
「はろー、皆さんごっ機嫌いかが〜?」
朝からどんなテンションなんだよ、と言いたくなるような口調で
現れたのは説明不要の有名人、生徒会会計の峻岑先輩だ。
「わたっち残念だったね、いきなりまとっちゃんに抜かれちゃうなんて。」
貼紙を見ながら言う先輩はニヤッとした笑みを浮かべている。『わたっち』って絖里のことだよね?…これは絶対にからかってる。
案の定絖里はムスッとして横を向いている。何て声をかけていいかわからずにあわあわとしていると、グッと肩を引かれた。余計に大きくなる悲鳴。
振り返って……みなければよかった。やっぱりというか何というか兎廩先輩がいるわけで、
「うん、僕のおかげだね。」
「断じて違う!!」
あんなの試してみようともしなかったっつーの!!
その後も纏わり付こうとする先輩を海睹が叩き潰して、なんとか教室までたどり着くことができた。
「アイツ……ムカつく………。」
悪態つく彼の目が俺を見ていたなんてその時は気づきもしなかった。
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なんと、気がついたら1万5千アクセスを超えていました!
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
これからも頑張るので、よろしくお願いします!!