表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銘光鳳学園  作者: 楓絽
16/29

悪魔の導き






「稔傘麻鈔です。よろしくおねがいします。」




温かい拍手で迎えられ、クラスデビューは無事に終えることができた。指定された席に行くと前には見知った顔が。




「これからよろしく。」




わぁ、前が絖里だ。

ラッキー、ツイてる!でも、隣の席が空いてる。休みか?

休み時間に絖里に聞いてみた。




「あぁ、そこは海睹っていうやつ。見た目恐いかもしれないけど、話すと意外とイイ奴だよ。でも、『みと納豆』は禁句、これ絶対。前にこれを言われたらブチ切れて、手に負えなくって本当に大変だったんだから。」



「……絶対に言いません。」




そんな命知らずなことしません。俺だって命が惜しいです。でも、この席順はかなりイイかも。




そのまま怖いほど時間は穏やかに過ぎていき、(4時間目の終わりに海睹がやっと戻ってきて怒られたこと以外)心配していた授業もついていけそう。なんだ、結構やっていけそうなかんじ!と、思ったのもつかの間、そこで今日の終わりを告げるチャイムが響き渡った。




帰りのHLが終わった瞬間俺は一目散に走り出した。もちろん自分の部屋に帰るために。そして引きこもるために。後ろの方で絖里の声が聞こえたような気もするけど、この場合は無視。ごめん絖里、俺らはいつまでも友達だよ!また明日会おう!!




急いで階段を駆け降りていると、曲がり角から人が出てきた。そのまま避けきれるはずもなく、その人を巻き込み床へダーイブッ!!




「いった〜ぃ。」



「すみません、大じょっ…」




起き上がろうとしたら背中に手を回されギュッと抱きしめられる。えっ?何この状況!?




「だーいたーん、まとっちゃん!!俺そんな愛情表現されたら襲っちゃうよー?」



「なぁっ!?峻岑先輩、なんでここに!?」




なんとか腕を外してもらい起き上がると、そこにはいじめっ子のように笑いながら制服についた埃を掃う峻岑先輩が。




「規衣に頼まれてまとっちゃんを迎えにきたんですー。急いで駆け降りたりしちゃって、そんなに早く規衣に会いたかった?ちゃんと生徒会室でも寮でも会えるじゃん。」



「ちがっ…、俺は帰ろうと……。」




さっさと逃げようとしたら、腕をつかまれた……あともうちょっとだったのに!




「あぁ、早く二人っきりになりたかった?残念だけど、規衣はいくら仕事ができないっていっても生徒会長だから、ハンコ押しっていう仕事があって早くは帰れないよ。」




俺の考えとは真逆の方向に話がどんどん進んでいく。それもはるか遠くまで、英語で言う『far away』ってやつ?




「それに、まとっちゃんを生徒会室に連れてこないとチョコケーキ食べちゃダメってらっちゃん言ってたし。だから、ちゃんと来て。俺のチョコケーキのために!!」



「自分の利益かい!」



「だってぇ、絖里にたのんだら自分の分のケーキくれるって言うからぁ。」




絖里の裏切り者ー!俺達友達だよね?そうだよね!?




そんなことを考えてるうちに、肩にヒョイと担がれ連れていかれそうになる。……意外と力あるなぁ、ってそんな場合じゃない!助けを求めるために大声で叫ぼうかと思ったとき




「何してんだ?」




聞き覚えのある声が上から降ってきた。




「ん?だれー?」




この状態だと顔は見えないが、きっと不敵に笑ってらっしゃるであろう峻岑先輩は、その声の主である海睹に話しかける。




「はじめまして、峻岑薫先輩。誘拐は犯罪ですよ。」




海睹は先輩の問いには答えず、淡々と言う。いや、話を続ける前に下ろしてほしいなぁ。




「誘拐!?そんな人聞きの悪い、俺はただ恋のキューピッドになってあげようと思って、行動に移してるだけだよ。」



「必要ないです!離してください!!」




すると、カツコツと音が響き再び浮遊感に襲われる。そのまま地面に下ろされると、海睹の後ろにサッと隠れてベーッっとする。

一瞬峻岑先輩は考えるような仕種をしたが、すぐにあの意地悪そうな顔をして俺らに微笑んでくる。……嫌な予感がする。




「ふーん、君まとっちゃんのお友達?ならさ、一緒に生徒会室に来ない?」



「嫌です。」



「チョコケーキあるよ?」



「チョコ嫌いですから。」




いいぞ、海睹!!あの峻岑先輩と真正面から闘っている。ファイトー海睹!俺の平和のために!!





「……はぁ。君達どうして俺がここまで来たと思ってんの?

この俺が来たんだよ!?規衣が暇ならあいつが来てるって。ようするに規衣は忙しいの。しかも、避けられない用事で。それにぃ………」




そこで『ニィッ』と先輩の口の端が上がる。もうダメだと俺の第六感が言っている。




「俺から逃げられるとでも思ってんの?」




まるで金縛りにでもあったかのように身体が動かない。そうしているうちに腕を引かれ、特別塔に進む。




俺は固まっていたせいで、峻岑先輩が海睹に何か耳打ちしていることに気付かなかった。




生徒会室って教室塔にはなくって職員室とかがある特別塔にあるんだよね。しかも、金持ちが好む(とも限らないか)最上階。眺めがいいのなんのって。生徒会室に近づくにつれ、人通りが少なくなる。元々ほとんど人はいなかったけど、今は人の気配のかけらもない。

こんなところに連れて来られて不安になるけど、唯一の救いは海睹が一緒に来てくれていること。何で一緒に来てくれたのかはわかんないけど、やっぱ一人は心細いよ。




昨日の時点で『学校の大嫌いな場所ベスト3』に入った生徒会室の重苦しい扉を軽々しく開ける峻岑先輩。




……先輩!心の準備がまだできていません!!




「連れてきたどー!!」




中に入るなり、そう叫んだ先輩に俺は一気に脱力し、もうどうにでもなれ!と思った。




本当この人わかんない。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ