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銘光鳳学園  作者: 楓絽
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理事長ですか、そうですか




この、誰が見ても『私、偉いんです!!』っていうような椅子に座っていらっしゃるパッションピンクが理事長?

この学園にまともなやつはいないのか!?それとも、理事長がこうだから生徒達があぁなったのか?……十分ありえる。




「いらっしゃーい。君が稔傘麻鈔君だね?はじめまして。僕はここの理事長してる、川波カワナミ 知祇トモキといいます。ここでの生活はもう慣れた?いやー、君みたいな生徒が来てくれて僕としては嬉しいよ。編入試験の成績も良かったし。いきなりのAクラスだなんて前代未聞だよ?どうやって勉強してるの?是非とも生徒たちに聞かせたい。あぁ、ごめんね気付かなくって。疲れたでしょ?さぁ、座った座った。」




入ってくるなりのマシンガントークと奇抜な頭の色に、若干引き気味だった俺は戸惑いながらも言われた通りに近くにあったソファーに腰掛ける。なにこれ!?座り心地最高!理事長室だし金かけてんだなぁ……。

俺の両隣には当たり前のように先輩方が座る。もういいけどね。予想の範囲内だ。




「はじめまして、川波理事長。本当は着いてからすぐに伺うべきだったんでしょうが、正直すっかり忘れてました。すみません。これからよろしくお願いします。」




ペコリと頭を下げると向かい側からクスクスと笑い声が聞こえてきた。

不思議に思って顔を上げると楽しそうに笑う理事長と目があった。




「笑ってごめんね。でも、おっかしー!普通本当のことでも来るの忘れてました、なんて本人に向かって言わないよね。それに……川波理事長って………あははははっ、理事長の前に苗字くっつけた生徒は初めて!!いやー、面白いね稔傘君。」




おかしいのはあなたの頭の色です!!とも言えず、いや、実際凄く似合ってるんだけど、その話し方も手伝ってか幼く感じる。年上なのはわかるよ?でも、何て言うか……おじ様って言うより話しやすいお兄さんってかんじ。

そのせいか爆笑されても腹は立たなかったし、むしろ堅苦しくなくてほっとした。理事長=頭の固いおじさんってイメージが意図も簡単に覆された。




「母親が役職呼びが嫌いで。小学校の時も校長って言ったら『何校長?』って笑顔で聞かれて……すごく恐怖で、その癖が未だに残ってるんです。」



「ふーん。だから規衣のこと先輩呼びなんだ。珍しいと思ったんだ、皆会長って呼ぶからね。」




腕を組み、ふーむ、と納得している峻岑先輩に俺は今更ながらにその事実に気づく。




「あ……、普通に会長って呼んだ方がよかったですかね?」



「嫌ぁー!絶対やだっ!!そんな他人行儀っぽいの!!」



「……いや、他人だから。」




俺の訂正も聞かず首に腕を回し引っ付いてくるこの人を殴ってもいいですか?




「うんうん。2人とも仲良くなってくれてよかったよ。そういえばカードを渡してなかったね。今出すからちょっと待ってて。」




ちょっと待てはこっちの台詞だ!どこをどう見たら仲良く見えるんだ!?本気で眼科を勧めるぞ!




「あったあった。はい、これね。ルームキーと身分証明書と財布の代わりになってるから絶対なくすなよ。」




……?ルームキー?




「え……?ルームキーならもう貰いましたよ?」




銀色に光るそれを取り出すと理事長は眉間にシワを寄せる。うん、そんな表情も似合っててカッコイイですよ。




「………ほぉ、なぁ兎廩?これはどういうことか説明できるよな?」




さっきまでの優しいお兄さんキャラはどこへやら、口元だけ吊り上げ目は笑っていない理事長の顔が、引き攣った笑みを浮かべる兎廩先輩にむけられる。




「いやぁ…、同じ鍵持ってるって同棲してるっぽくていいなぁと思ったから、勝手に鍵を付け替えました。ごめんね?」




首を傾げながら言うが高校男子がやっても全然可愛くないぞ。




「…わかった。じゃあ、もう二度と付け替えれないように頑丈にしよう。そして個人の部屋にも同じように頑丈な鍵をつけよう。」




グッジョブ理事長!変な髪とか思ってすみません。兎廩先輩が隣で『そんなぁー』とか言ってるけど、ガン無視。すると、ここまで大人しくしていた峻岑先輩が口を開く。




「理事長〜ついでに1ついいですか?まとっちゃんを生徒会に入れたいんですけど。

だってこのままじゃ、いくら絖里がいるからって親衛隊に『狙って〜!!』って言ってるようなものだし。」




「まー確かに、兎廩と部屋が一緒っていうのもバレるのは時間の問題だろうしなぁ。」




なんか聞き慣れない言葉が峻岑先輩から聞こえる。

残念なことに、それはけしていいことではなさそうだ。




「あぁ、まとっちゃんは親衛隊を知らないよね?しょうがない、俺が説明しよう。」




峻岑先輩曰く、親衛隊とは見た目のいい生徒(例えば生徒会とか)にできたファンクラブみたいなもので、対象の生徒に近づく者は容赦無く潰されるらしい。親衛隊のせいでこの学園を去った生徒は数知れず。時には意見の食い違いから大きな事件にまで発展するらしい。

それなのに未だに親衛隊が存在するのは、ただ単に人数が多すぎて手におえないらしい。さらに裏でこそこそと制裁を加えるため、首謀者は表に出てこず学園でも予想はできているが証拠がなく、強くは言えないのだそうだ。無理矢理解散させても勝手に復活するしまつ。最近ではそこそこ親衛隊と遊んであげて気を紛らわせているんだと。




「……もしかして、最初に会った時って…。」



「あぁ、鬼ごっこしてた。」




鬼率高くない!?って、そこじゃないし。そんな幼児みたいな遊びでいいの!?……朔螺先輩がそんなことしてるの想像できない。




「俺は昨日皆でお菓子食べた〜。皆優しいから、いっぱい持ってきてくれるの。」




あぁ、あなたが用意するんじゃないんですね。なんかだんだんとこの人の性格がわかってきたような気がする。




「と、いうわけでまとっちゃんは自分の身を守るためにも生徒会に入らなければならないのでーす。」



「やったね麻鈔!これでずっと一緒だよ!!」




親衛隊が恐ろしいというのは、よーくわかった。だからといってあのなかに入るのは、ちょっと……いや、かなり遠慮したい。毎日セクハラにあうのはたまんない、俺の平穏な生活を返せ!!




「じゃあ、こうしよう。今はいきなり編入生に生徒会の役職を与えるのは難しいから、仮補佐ということで皐月祭まで頑張ってもらって、終了時の生徒会長挨拶の時に新しい補佐の制度を発表すればいい。

生徒達も浮きだってるだろうから、1番認めてくれるチャンスだろうし。」




「それでOK!頑張ろうね、麻鈔。」




どうせ俺には拒否権ないんでしょ?そうなんでしょ?

拗ねてた俺は理事長の言葉を聞き流し、抱き着いてくる先輩を必死に引き離していた。











だから、気付かなかった




『仮』という言葉の曖昧さに




このあとの事態を予測していたのは、きっとこの学園の中では3人だけ











その3人の中にもちろん俺は含まれていない










.

遅くなってすいません。

ホントはさっさと進もうと思ったんですが、『あぁーっ!理事長会ってねぇ!!』と思い出し、バタバタ書きました。

ちなみに、私は中学まで鬼ごっこしてました。

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