苦手なタイプ
ゲストルームでソファーに二人で並んで座ると目の前にグラスに注がれたシャンパンとドレスのカタログが置かれた。
マダムとスタッフは、ごゆっくりお選び下さい。とクロード様に気を遣ったのか、私達二人にしてくれた。
隣のクロード様は、大股を開き下を向いて座っている。
「…あれが妹か?」
「そうですよ」
「…なんだ」
「何ですか?」
「ああいうタイプが苦手なんだ」
「……」
クロード様はメイベルが苦手らしい。
「どうしてあんな甘えた話し方なんだ!」
「す、すみません」
「ラケルのせいじゃない。似てなくて良かった」
クロード様は深呼吸し、取り乱してすまないと言った。
「いえ、取り乱したと言うほどでは…」
「ドレスのことだが、妹が勝手に持って行くと言ったな」
「多分今回も狙ってますね。でも、今回だけは絶対渡しませんから」
せっかくクロード様が買って下さるのに、帰ったら早速隠してやるわ!
「問題は隠すところですね。汚したくないですし」
「…俺の邸に置いておくか?明日は俺の邸で支度をしたらどうだ?」
「ご迷惑では?」
「邸は俺だけしかいない。両親は領地の本邸に住んでいるし、使用人にもラケルが来ることは伝えておくから」
「でも、ドレスは一人で支度は出来ません。髪も結わないといけませんし…」
結婚したら侍女をつけるけど、今はメイドに手伝ってもらっている。
普段着なら一人でも問題ないが、ドレスはさすがに一人で支度は無理だ。
「母上が来た時に母上の侍女と一緒に支度を手伝っているメイドがいる。その者に支度をさせよう」
クロード様の邸に置いておくとメイベルに持っていかれることはないが、いいのかしら。
「…私がお邸にお邪魔して、将来クロード様の縁談に傷がつきませんか?」
「そんなことはない。…ラケル、君が嫌ではないなら…」
そう言われ、置いて頂こうかと脳裏をかすった時、クロード様は真剣な顔でこちらを見ていた。
「…では、お言葉に甘えて明日はクロード様のお邸で支度をさせて頂きますね」
「また、明日も迎えに行くからな」
「はい」
そして、この日に買って頂いたドレスはアラステア邸に届けて頂いた。